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舌下免疫療法は子供でも受けられる?最適な開始時期と注意点を解説
お子さんの花粉症やアレルギー性鼻炎がひどく、「根本から治してあげたい」とお考えの保護者の方は多いのではないでしょうか。
とくに、抗ヒスタミン薬などのアレルギー薬は眠気の副作用があるため、「授業中にウトウトしてしまうのでは……」と不安に感じる方も少なくありません。
そんなお悩みに対する選択肢のひとつが「舌下免疫療法」です。
舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ体内に取り入れることで、アレルギー反応を起こしにくい体質へと改善していく治療法です。
スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎に対して保険適用で受けることができ、対症療法とは異なり、アレルギーの根本治療が期待できる唯一の治療法として注目されています。
この記事では、舌下免疫療法を何歳から受けられるのか、治療を始めるのに最適な時期はいつか、メリット・デメリット、そしてお子さんならではの注意点について、ガイドラインや論文の情報をもとにわかりやすく解説します。
Contents
子供の舌下免疫療法は何歳から?
舌下免疫療法は、スギ花粉症に対する治療薬「シダキュア」、ダニアレルギーに対する治療薬「ミティキュア」のいずれも、5歳以上から治療が可能とされています。
もともと舌下免疫療法は2014年に成人向けに保険適用となりましたが、当初は12歳以上が対象でした。その後、小児に対しても安全性が確認されたことから、2018年にミティキュア(ダニ)は2月から、シダキュア(スギ花粉)は6月から、それぞれ年齢制限が撤廃され、5歳以上のお子さんにも処方が可能になりました。
なぜ「5歳以上」が推奨されるのか
舌下免疫療法では、薬を舌の下に置いてから1〜2分間、唾液を飲み込まずに保持する必要があります。5歳未満のお子さんの場合、この「舌の下に1分以上保持する」という動作が難しいケースが多いためです。
薬をすぐに飲み込んでしまうと、治療効果が十分に得られないだけでなく、胃酸で有効成分が分解されてしまいます。
また、万が一の副作用(口の中の腫れやかゆみなど)が出た場合に、お子さん自身が症状をきちんと言葉で伝えられるかどうかも重要なポイントです。
5歳以上であれば、多くの場合「口がかゆい」「のどが変」などと自分で申告できるため、保護者や医師が速やかに対応することができます。
4歳以下でも受けられるケースはある?
一部のクリニックでは、4歳半や4歳から治療を開始しているケースも報告されています。
ただし、これは医師がお子さんの発達段階や理解力を個別に評価したうえで判断しているものです。
また、3歳以上で対応可能とするクリニックもありますが、あくまで例外的な対応であり、一般的には5歳以上が目安です。
なお、ある小児アレルギー専門医の見解では、無理に5歳ちょうどで始めるよりも、小学校に上がる6歳頃まで待つことを推奨する意見もあります。
6歳頃になると「自分で毎日薬を飲む」という習慣づけがしやすくなり、歯磨きや宿題のように日常のルーティンに組み込めるようになるためです。
舌下免疫療法は3〜5年間の継続が必要ですから、お子さん自身が治療の必要性をある程度理解し、自発的に取り組めるかどうかが治療成功の大きなカギとなります。
関連記事:【舌下免疫療法】花粉症への効果は一生続く?費用やデメリットも解説
子供の舌下免疫療法の開始に最適な時期
舌下免疫療法は、治療の対象となるアレルゲン(スギ花粉またはダニ)によって、治療開始に適した時期が異なります。
お子さんの場合は、入学や受験といったライフイベントも考慮しながら計画的に始めることが大切です。
スギ花粉症
スギ花粉症に対する舌下免疫療法(シダキュア)は、スギ花粉が飛散していない6月〜12月頃に治療を開始する必要があります。
花粉が飛んでいる1月〜5月上旬は、体がアレルゲンに対して過敏な状態になっているため、この時期に新たに治療を始めることはできません。
治療を始めると、最初のスギ花粉シーズンから効果が現れ始め、2〜3年継続することで症状が大幅に軽減されると報告されています。
入学・受験シーズンから逆算した開始時期の目安
スギ花粉の飛散ピークは例年2月〜4月です。
この時期はちょうど中学受験や高校受験のシーズン、そして卒業式・入学式といったお子さんにとって大切なイベントが集中する時期でもあります。
実際に、国立病院機構福岡病院の舌下免疫療法外来でも、受験シーズンとスギ花粉症の時期が重なる小中学生・高校生を舌下免疫療法の特に推奨されるケースとして挙げています。
たとえば、中学受験を見据えて花粉シーズンに万全の体調で臨みたい場合、受験本番(1〜2月)の少なくとも3年前の夏(6〜8月頃)に治療をスタートするのが理想的です。
具体的な目安として、小学3年生の夏〜秋に開始すれば、小学6年生の受験シーズンには十分な治療効果が期待できます。
「もう少し早く始めておけばよかった」とならないよう、お子さんのアレルギー症状が気になり始めた時点で早めにご相談いただくことをおすすめします。
ダニアレルギー
ダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法(ミティキュア)は、スギ花粉のように飛散シーズンの制約がないため一年を通じていつでも治療を開始することが可能です。
ただし、スギ花粉症を併せ持っているお子さんの場合は、花粉飛散期が終わってからダニの舌下免疫療法を始めるのがおすすめです。
また、スギとダニの両方の治療を同時に行うことも可能ですが、その場合は一方を先に始めて副作用が落ち着いてから(おおむね3か月後)もう一方を追加する方法がとられます。
ダニアレルギーの場合、治療を始めて数か月後から効果が現れ始め、年単位で継続することでより高い効果が得られるとされています。
子供に舌下免疫療法を受けさせるメリット
根本改善・症状抑制
舌下免疫療法の最大のメリットは、アレルギー体質そのものを改善できる点です。
抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などの対症療法は、薬を使っている間だけ症状を抑えるものですが、舌下免疫療法はアレルゲンに対する免疫の過剰反応を根本から抑える仕組みのため、治療終了後もその効果が長期間持続します。
厚生労働省の発表によると、舌下免疫療法は約8割の方に効果があるとされています。
内訳として、以下の報告されています。
- 約30% 症状が完全になくなる
- 約30% 症状が大幅に軽減して薬の量が減る
- 約20% ある程度の改善がみられる
- 約20% 効果がみられない
また、舌下免疫療法を3〜5年継続して行った場合、治療終了後も7〜8年間は症状が抑制されるというデータも報告されています。
万一症状が再燃した場合でも、再び1〜2年ほど舌下免疫療法を行うことで速やかに効果を取り戻せるとされています。
将来的な喘息・新たなアレルギーの予防
お子さんに舌下免疫療法を早い段階で開始するメリットとして、「アレルギーマーチ」の進行を予防できる可能性が挙げられます。
アレルギーマーチとは、乳幼児期のアトピー性皮膚炎から食物アレルギー、喘息、花粉症へと年齢とともにアレルギー疾患が連鎖的に進んでいく現象のことです。
研究によると、舌下免疫療法は鼻炎だけでなく気管支喘息の発症予防効果も小児で認められています。
さらに、すでに1つのアレルゲンに対してアレルギーを持っている場合、治療をしないと15年間でほぼ100%新たなアレルゲンへの感作(新しいアレルギーが増えること)が起きるとされています。
しかし、舌下免疫療法を5年間行うとその割合が10%程度まで抑制されたとする報告もあります(Marogna M, J Allergy Clin Immunol. 2010)。
つまり、子どものうちに治療を始めることで、将来的に喘息に発展するリスクや、新たなアレルゲンに反応してしまうリスクを大幅に減らせる可能性があるのです。
眠気や倦怠感からの解放
花粉症やアレルギー性鼻炎の一般的な治療薬である抗ヒスタミン薬には、眠気や集中力の低下といった副作用があります。
とくにお子さんの場合、授業中に眠くなってしまったり、テストで集中できなかったりと、学業への影響が心配されます。
舌下免疫療法で体質が改善されれば、こうした対症療法の薬を減らす、あるいはまったく使わなくて済むようになる可能性があります。
薬の眠気を気にすることなく、お子さんが本来の力を発揮できる環境を整えてあげられるのは、大きなメリットといえるでしょう。
自宅で治療が可能
舌下免疫療法は、初回のみクリニックで医師の指導のもとに投与を行いますが、2日目以降はご自宅で毎日服用する治療です。
1日1回、舌の下に薬を置いて1〜2分保持するだけですので、お子さんでも短時間で手軽に行えます。
通院頻度は月1回程度(安定すれば2か月に1回)で済むため、学校や習い事で忙しいお子さんにも負担が少なく、治療を継続しやすい点が特徴です。
以前の皮下注射による免疫療法と比較すると、痛みもなく通院の手間も大幅に減り、まさにお子さん向きの治療法といえます。
保険適用・こども医療費助成で経済的負担が少ない
舌下免疫療法は保険診療で行えるため、3割負担の場合、薬代はスギ花粉症で月約1,500円、ダニアレルギーで月約2,800円が目安です。
さらに、お子さんの場合は各自治体の「こども医療費助成制度」が適用されるため、実質的な自己負担が無料〜数百円程度で済むケースがほとんどです。
千葉県にお住まいのお子さんの場合も、助成制度により200〜500円程度の自己負担で治療を受けられます。
関連記事:舌下免疫療法の費用はいくら?トータルコストと対症療法との比較
関連記事:花粉症に効く舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)って?費用・期間・効果は?
子供の舌下免疫療法の注意点
メリットの多い舌下免疫療法ですが、お子さんならではの注意点もあります。
治療を始める前に、以下のポイントをしっかりと把握しておきましょう。
副作用
舌下免疫療法は安全性の高い治療法ですが、アレルゲンを直接体に取り込むため、副作用が出る可能性はゼロではありません。
とくにダニの舌下免疫療法(ミティキュア)はスギ花粉(シダキュア)よりも副作用がやや強く出やすいとされています。
そのため、お子さんに気管支喘息がある場合は喘息のコントロールが十分にできている状態で開始することが重要です。
主な副作用は以下のとおりです。
よくみられる副作用(軽微なもの)
- 口の中のかゆみ・腫れ
- 口内の違和感、唇の腫れ
- のどのイガイガ感
- 耳のかゆみ など
これらは治療開始初期(おおむね1か月以内)に多くみられますが、通常は次第に軽減していきます。
まれな副作用(重篤なもの)
アナフィラキシーの報告はきわめてまれで、皮下免疫療法と比較すると発生頻度は非常に低いとされています。
舌下免疫療法によるアナフィラキシーショックは1億回の投与あたり1回程度で、これまでに死亡例の報告はありません。
ただし、初回投与時にはクリニックで30分間の経過観察を行い、万が一の反応に備えます。
歯の生え変わりとの関係
お子さん特有の注意点として、乳歯から永久歯への歯の生え変わりがあります。
舌下免疫療法で使う薬剤(シダキュア・ミティキュア)の製薬会社が作成した手引書にも「歯が生え変わる時は、事前に医師に対応方法を確認しておくとよいでしょう」と記載されています。
乳歯が抜けた直後は口の中に傷(開放創)がある状態です。
この状態で薬を舌の下に置くと、傷口から通常よりも多くのアレルゲンが体内に吸収され、アレルギー反応が強く出る可能性が指摘されています。
日本小児歯科学会も、舌下免疫療法中の小児が歯科治療を受ける際にはアレルギー反応のリスクに注意が必要であることを公表しています。
ただし、実際に歯の生え変わり時の服用で重篤な症状が出たという報告は現在のところありません。
一般的には、乳歯が抜けた前後数日〜1週間程度は服用を休薬し、出血や痛みが落ち着いてから再開するという対応がとられます。
歯科治療中の対応
歯の生え変わりだけでなく、虫歯の治療や歯列矯正など、歯科治療全般についても注意が必要です。
抜歯などの出血を伴う処置の後は、傷口からアレルゲンが吸収されやすくなるため、処置前3〜4日から処置後1週間程度の休薬が推奨されています。
また、歯科矯正中のお子さんも注意が必要です。
ブラケット(矯正器具)が口の粘膜に当たって傷ができていることがあり、同様のリスクが考えられます。
舌下免疫療法を受けていることは、必ず歯科医師にも伝えるようにしましょう。
歯科医師と主治医が連携して対応することで、安全に治療を進められます。
治療の継続が最大の課題
舌下免疫療法は3〜5年間、毎日薬を服用し続ける必要があります。
この「長期間の継続」がお子さんにとって最大のハードルとなることがあります。
小さなお子さん(5〜6歳)の場合
治療の必要性を理解することが難しい年齢では、「なんで毎日薬を飲まないといけないの?」と疑問を持ち、途中で嫌がってしまうケースがあります。
ある小児科の先生は「歯磨きが自分で習慣づくころ(小学校に上がるころ)に始めるのがちょうどよい」と話しており、お子さん自身の動機づけが継続のカギになります。
治療を続けていることを褒めてあげること、そして医師と一緒に「がんばろうね」と約束することが、やる気を保つポイントです。
小学生以降の場合
小学生以降になると、治療の必要性は理解できるものの、今度は修学旅行や校外学習、宿泊行事での服用忘れが課題になります。
日常生活ではルーティン化できていても、環境が変わると忘れてしまいがちです。
旅行前に薬を荷物に入れる習慣をつけたり、スマートフォンのアラームを設定したりといった工夫が大切です。
なお、数日程度の飲み忘れであれば大きな問題にはなりません。
1か月以内の休薬は許容範囲とされていますが、3か月以上の長期間中断してしまった場合は、少量から再開する必要があるため医師への相談が必要です。
「忘れた日があっても大丈夫」と知っておくだけで、お子さんも保護者も気持ちが楽になるでしょう。
千葉内科在宅・美容皮膚科クリニックでできること
千葉内科在宅・美容皮膚科クリニックでは、「アレルギー・花粉症/舌下免疫療法外来」を設けており、お子さんの舌下免疫療法に対応しています。
一般内科だけでなく小児科の診療も行っているため、お子さんのアレルギー症状に総合的に対応可能です。
血液検査によるアレルギー検査から、治療開始、定期的なフォローアップまで一貫して受けられます。
舌下免疫療法を検討されている方には、まず検査を行い、お子さんの症状やアレルゲンの種類を正確に診断したうえで、治療計画をご提案します。
「舌下免疫療法が気になるけれど、まずは話を聞いてみたい」という方も、お気軽にご予約・お問い合わせください。
花粉シーズン中は症状に合わせた薬の処方も可能ですので、今すぐ舌下免疫療法を始められない時期でもまずはご相談ください。
▶ 当院のアレルギー・花粉症/舌下免疫療法外来の詳細はこちら
まとめ
舌下免疫療法は、5歳以上のお子さんから受けることのできる、アレルギー性鼻炎の根本治療法です。
対症療法とは異なり、体質そのものを改善する唯一の治療法であり、約8割の方に効果が認められています。
お子さんのアレルギー症状で悩んでいる保護者の方は、まずは医師にご相談ください。
花粉シーズンが終わる6月頃から治療を開始できるスギ花粉症の場合、今のうちから計画を立てておくことが、お子さんの快適な学校生活への第一歩となります。

千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)
経歴
- 三重大学医学部医学科 卒業
- 四日市羽津医療センター
- 西春内科・在宅クリニック
- 千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック院長