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膵癌とはどんな病気?見逃されやすい理由と早期発見のポイント

膵癌(すいがん)は、発見が遅れやすく、治療が難しい癌として知られています。

実際に、診断時点で約7~8割の方が進行した状態で見つかるとされ、「沈黙の臓器の癌」とも呼ばれます。

一方で、医学の進歩により治療成績は確実に改善しており、「早く気づく」「適切な医療につながる」ことが非常に重要です。

本記事では膵癌の症状・検査・治療法と、早期発見のポイントを医師がわかりやすく解説します。

膵癌とはどんな病気?

膵臓がんは非常に多様ですが、その約90%以上は膵液が流れる管(膵管)から発生する「膵管腺癌(浸潤性膵管癌)」であり、一般的に「膵がん」という場合はこれを指します。

国立がん研究センターのがん統計によると2021年に新たに膵癌と診断された人は約45,800人にのぼります。

一方で、厚生労働省によると膵癌による年間死亡数は約40,000人以上と報告されており、罹患数と死亡数がほぼ同程度であることが特徴です。

全がんの中で死亡数は4位となっています。

罹患数と死亡数がほぼ等しいことからもわかるように膵がんは予後の悪いがんの1つということがわかります。

罹患率は60歳頃から増加し、高齢になるほど高くなる傾向にあります。

膵臓の働きと、癌が問題になる理由

膵臓は、食べ物を消化する「消化酵素」を分泌する働きと、血糖値を調整するホルモン(インスリンなど)を分泌する働きを担う臓器です。

膵癌が進行すると、腫瘍によって膵管や胆管が閉塞するほか、進行に伴ってがん細胞が周囲の神経や血管へ広がっていきます。

その結果、黄疸や背中の痛み、体重減少といった症状が現れることがあります。

膵癌のステージ別症状

ステージ状態の概要主な症状
ステージ0膵管の上皮内にがん細胞がとどまっており、周囲へは広がっていない・自覚症状はほとんどない・健康診断や他疾患の検査で偶然見つかることが多い
ステージIがんが膵臓内に限局している・自覚症状は少ない・軽い倦怠感や食欲不振がみられることがある
ステージII周囲の臓器やリンパ節への広がりが始まっている・みぞおちや背中の痛み・体重減少・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
ステージIII主要血管にがんが及び、手術が難しくなる段階・痛みの増強・体重減少の進行・消化不良や便の異常
ステージIV他の臓器(肝臓・肺など)に転移している・強い倦怠感・持続する痛み・食欲低下・腹水(お腹に水がたまる)・全身の衰弱

背中の痛みの特徴

膵臓は後腹膜臓器といわれ腹部の奥、背中に近い位置にあり、癌が神経に及ぶと夜間に痛みが強くなったり、体勢を変えても痛みが続くといった特徴が現れます。

痛みは背中全体に広がることもあり、特に中心部や左側の痛みが強くなりやすいです。

関連記事:緩和ケアと言われたら平均余命はどれくらい?対象はどんな人?

膵癌はなぜ見逃されやすいのか?

膵癌が早期に見つかりにくい理由は、症状の出方と検査上の特性にあります。

初期の膵癌では、食欲不振やだるさといった体調不良が現れることはありますが、症状がはっきりせず、日常的な不調として見過ごされやすい傾向があります。

そのため、胃腸炎や腰痛など、別の病気と判断されてしまうケースも少なくありません。

また、血液検査のみでは明らかな異常が出ないことが多い点も、発見が遅れやすい理由の一つです。

腫瘍マーカーも早期段階では上昇しない場合があり、症状が軽い段階で膵癌を疑うことは簡単ではありません。

実際には、黄疸が出現してから医療機関を受診し、検査の結果として膵癌が見つかるケースや、糖尿病が急激に悪化したことをきっかけに精査される例が多く見られます。

また、他の病気の検査中に偶然発見されることもあります。

このように、膵癌は自覚症状に乏しいまま進行することがあるため、「なんとなく不調が続く」と感じる状態を軽視しないことが重要です。

原因不明の体調変化が続く場合には、早めに医療機関で相談することが、早期発見につながる可能性があります。

膵癌の検査方法

膵癌の診断では、目的に応じて複数の検査を組み合わせて評価が行われます。

ここでは、代表的な検査方法について解説します。

血液検査(腫瘍マーカー)

血液検査では、CA19-9などの腫瘍マーカーが測定されます。

膵癌の診断や治療経過の確認に用いられますが、早期の段階では正常値を示すことも多く、血液検査のみで膵癌を判断することは困難です。

そのため、あくまで補助的な検査として位置づけられています。

CT検査(造影CT)

造影CT検査は、膵癌の診断と進行度評価の中心となる検査です。

腫瘍の大きさや位置だけでなく、周囲の血管への浸潤、リンパ節転移や遠隔転移の有無を確認でき、治療方針を決めるうえで重要な役割を担います。

MRI・MRCP検査

MRIやMRCPは、膵管や胆管の形態変化を詳しく評価できる検査です。

CTでは分かりにくい膵管の狭窄や途絶といった変化を捉えやすく、早期病変の発見に役立つ場合があります。

腹部超音波検査

腹部超音波検査は、身体への負担が少なく、外来でも実施しやすい検査です。

一方で、膵臓は体の奥に位置する臓器であるため、腸管ガスや体型の影響を受けやすく、確定的な診断が難しいケースも少なくありません。

超音波内視鏡検査(EUS)

超音波内視鏡(EUS)は、膵癌の検査の中でも特に精度が高い方法です。

胃や十二指腸の内側から膵臓を近接して観察できるため、小さな膵癌でも発見できる可能性があります。

さらに、超音波内視鏡を用いた穿刺吸引生検(EUS-FNA)により、組織を採取して病理診断を行うことも可能です。

膵癌の治療法

膵癌の治療は、日本膵臓学会が作成する「膵癌診療ガイドライン」や、米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインに基づいて行われるのが一般的です。

病期や全身状態に応じて、複数の治療法を組み合わせながら方針が決定されます。

手術療法

手術は、膵癌において根治を目指せる唯一の治療法です。

ただし、診断時点で手術が可能な患者さんは全体の約20%前後に限られています。

重要となるのは、がんを完全に取り切れるかどうかであり、顕微鏡的にもがんの残存がない「R0切除」が達成できるかが予後に大きく影響します。

術前・術後の化学療法

近年では、手術単独ではなく、抗がん剤治療を先行させたうえで手術を行う治療戦略が標準的になりつつあります。

いわゆる術前化学療法や、手術後に行う補助化学療法を組み合わせることで、再発リスクを抑え、生存率が有意に改善したという報告もあります。

切除不能・進行膵癌の治療

手術が難しい切除不能膵癌や進行膵癌では、全身化学療法が治療の中心となります。

代表的な治療法の一つがFOLFIRINOX療法です。

この治療法は、フルオロウラシル、オキサリプラチン、イリノテカンに、フルオロウラシルの作用を高めるレボホリナートカルシウムを併用する多剤併用療法で、高い有効性が知られています。

一方で副作用も強く、日本人では骨髄抑制が出やすいことが分かっています。

もう一つ広く用いられているのが、ゲムシタビンとナブパクリタキセルを併用する治療法です。

全身状態(PS)が比較的保たれている患者さんを中心に選択され、効果と安全性のバランスが取れている点が特徴とされています。

高齢の方でも比較的使用しやすく、外来通院で治療できるケースが多い点も利点です。

実際の治療選択は、患者さんの体力や生活背景を考慮したうえで判断されます。

緩和ケア

膵癌の治療において、緩和ケアは非常に重要な役割を担います。

「緩和ケア=最期の医療」「治療をやめた段階で行うもの」と誤解されがちですが、現在の医学ではその考え方は大きく変わっています。

緩和ケアとは、がんによる身体的・精神的・社会的なつらさを和らげ、生活の質(QOL)を保つことを目的とした医療です。

対象となるのは、痛みや食欲不振、倦怠感といった身体症状だけではありません。

不安や抑うつ、睡眠障害、ご家族の不安や介護負担など、がんとともに生活する中で生じるつらさ全般が含まれます。

そのため、緩和ケアは治療の最終段階だけでなく、診断直後や治療と並行して取り入れることが重要とされています。

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関連記事:疼痛コントロールはどう行う?慢性痛に役立つ治療とケア方法

医師から患者さん・ご家族へのメッセージ

膵癌の治療は、単に「がんを小さくすること」だけを目的としたものではありません。

痛みを和らげること、食べる楽しみをできるだけ保つこと、不安や気持ちのつらさを軽くすること、そして家族と過ごす時間を支えることも、すべて治療の大切な一部です。

治療を受ける中で感じるつらさは、人によって異なります。

「こんなことを相談していいのだろうか」と迷ってしまうような症状や不安ほど、実は医療者が一緒に向き合うべきサインであることも少なくありません。

小さな変化や違和感でも、遠慮せずに医師や看護師に伝えてください。

症状を共有することが、治療や生活を少しでも楽にする第一歩になります。

関連記事:末期がんによく見られる症状とは?急に悪化するのは死の兆候?

受診の目安|今すぐ病院に行くべき症状

膵癌は早期症状が乏しい一方で、症状が現れた時点では進行していることも少なくありません。

以下のような症状がみられる場合は、「もう少し様子を見る」のではなく、早めに医療機関を受診することが重要です。

今すぐ受診を検討すべき症状

皮膚や白目が黄色くなってきた(黄疸)

黄疸は、膵癌によって胆管が圧迫されている際にみられる代表的な症状です。

あわせて次のような変化が出ることがあります。

  • 尿の色が濃くなる
  • 便の色が白っぽくなる
  • 体のかゆみを伴う

これらがみられる場合は、緊急性を伴うことがあります。

原因のはっきりしない背中・みぞおちの痛みが続く

数週間以上続く痛みや、夜間・安静時にも現れる痛み、姿勢を変えても改善しない痛みは注意が必要です。

  • 数週間以上続いている
  • 夜間や安静時にも痛む
  • 姿勢を変えても楽にならない

膵癌による神経への影響が関係している可能性があります。

意図していない体重減少がある

食事量が変わっていないにもかかわらず体重が減っている場合も、重要なサインです。

  • 数か月で3~5kg以上の体重減少
  • 食事量は以前と変わらない

がんによる代謝の変化や消化吸収障害が疑われます。

食欲不振・吐き気・消化不良が続く

消化に関する変化が続く場合も、膵臓の機能低下が背景にあることがあります。

  • 油物で下痢をしやすくなった
  • 便が浮く、においが強い

膵臓の消化酵素が十分に分泌されていない可能性があります。

糖尿病が急に悪化、または新たに指摘された

これまで安定していた血糖値が急に悪化した場合や、中高年になってから突然糖尿病を指摘された場合も注意が必要です。

  • 今まで安定していた血糖値が急に悪化
  • 中高年で突然糖尿病と診断された

膵癌が背景に隠れていることがあります。

強い倦怠感が続き、日常生活がつらい

休んでも回復しない倦怠感や、食事や外出が億劫になる状態が続く場合は、全身状態の変化として見逃せません。

すぐではないが、早めに相談したほうがよい状態

次のような状態が続く場合も、放置せず医師に相談することが大切です。

  • なんとなく体調が悪い状態が数週間以上続く
  • 胃薬を飲んでも腹部の不快感が改善しない
  • 健診で「膵臓が見えにくい」「胆管が太い」と指摘された

千葉内科・在宅クリニックでできること

千葉内科・在宅クリニックでは、膵癌が疑われる段階から専門病院と連携し、検査や治療につなぐサポートを行っています。

通院が難しくなった場合には、在宅での痛みの調整や服薬管理など、生活に合わせた医療の相談にも対応しています。

症状や治療について「どこに相談すればいいか分からない」と感じた時は、まずは一度ご相談ください。

まとめ|患者さん・ご家族へ

膵癌は早期発見が難しい病気ですが、体の変化に早く気づくことが何より重要です。

背中の痛みや黄疸、原因のはっきりしない体重減少などは、放置せず医療機関で確認すべきサインといえます。

治療は、手術や抗がん剤治療だけで完結するものではありません。

症状を和らげ、生活の質を保つための緩和ケアや、状況に応じた在宅医療も含めて、治療の一部として考えることが大切です。

「もう少し様子を見よう」という判断が、結果として受診の遅れにつながることもあります。

不安や迷いがある段階でこそ、早めに医療機関へ相談することが、今後の選択肢を広げる一歩になります。

参考文献・ガイドライン

  • 日本膵臓学会 膵癌診療ガイドラインhttps://www.suizou.org/gaiyo/guide.htm
  • 国立がん研究センター がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/treatment.html
  • Conroy T, et al. 2011 — FOLFIRINOX vs gemcitabine for metastatic pancreatic cancer https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21561347/
  • Uesaka K, et al. 2016 — JASPAC-01: Adjuvant chemotherapy of S-1 vs gemcitabine https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27265347/
  • Randomized phase II/III trial Prep-02/JSAP05 — Neoadjuvant chemotherapy with gemcitabine and S-1 vs upfront surgery https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30608598/
この記事の監修医師


千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)

経歴

  • 三重大学医学部医学科 卒業
  • 四日市羽津医療センター
  • 西春内科・在宅クリニック
  • 千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック院長

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