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がん治療で使われる分子標的薬の副作用や抗がん剤との違いを解説

分子標的薬

がん治療と聞くと、激しい闘病生活や髪の毛を含む体毛が抜け落ちるなど、副作用の話をよく耳にします。

しかし、最近では副作用を抑えられるかもしれない新しい選択肢、「分子標的薬」が注目されています。

今回は、この分子標的薬の効果やメリット、そして従来の抗がん剤との違いについて見ていきましょう。

分子標的薬とは?

分子標的薬

分子標的薬とは、がん細胞の成長や増殖に関係する特定の分子を狙い撃ちする薬です。

そのため、正常な細胞への影響を最小限に抑えることができます。

関連記事:『IVR』最新医療について解説

分子標的薬と抗がん剤の違いは?

分子標的薬

抗がん剤の特性

抗がん剤はがん細胞を破壊するために使われますが、正常な細胞にも作用してしまいます。

その結果、細胞の増殖が盛んな髪の毛や、胃などの消化器官に多くの副作用が出やすいです。

一般的な症状として、脱毛、吐き気、血液を作る骨髄の働きが低下するなどです。

分子標的薬の特性

分子標的薬はがん細胞だけを標的にするため、正常な細胞への影響が少なく、副作用も軽減されます。

その結果、患者様の生活の質を維持しながら治療を行うことが可能です。

がん細胞の成長や分裂を抑制することで、がんの進行を効果的に止めることができます。

分子標的薬の種類一覧

分子標的薬

血管新生阻害薬(薬品名:ベバシズマブ)

がん細胞は普通の細胞よりも多くの酸素と栄養を必要とします。

そのため、がん細胞は自分たちに栄養を送る為の血管を新しく作ります。

この工程を阻害するのが血管新生で、大腸がんと肺がんに適した薬となります。

BRAF阻害薬(薬品名:ダブラフェニブ)

BRAF(ビーラフ)たんぱく質が変質すると細胞増殖を促す指令を出します。

その指令を阻害する薬です。

主にメラノーマ、肺がん(非小細胞肺がん)などに使用されます。

MFT阻害薬(薬品名:トラメチニブ)

MEKたんぱく質の働きを阻害し、異常な細胞増殖を抑えます。

主にメラノーマに使用され、BRAF阻害薬と併用します。

ROS1/NTRK阻害薬(薬品名:エヌトレクチニブ)

ROS1(ロスワン)やNTRK遺伝子の異常な融合(全く別の遺伝子と結合)をすることがあります。

融合した遺伝子はがん細胞を増殖させるため、この薬でその働きを抑えます。

主に非小細胞肺がんや胃がんなどの臓器にできるがんに使われることが多いです。

RET阻害薬(薬品名:セルペルカチニブ)

RET融合遺伝子は肺がんの原因の一つで、その遺伝子の働きを抑えてくれます。

RET遺伝子が変異したことによる非小細胞肺がんに使用されます。

KRAS阻害薬(薬品名:ソトラスチュズマブ)

KRAS遺伝子に異常が起こり、正常な細胞をがん細胞へ変異させたり、がん細胞を増殖してしまいます。

その働きを抑える薬です。

KRAS遺伝子変異による非小細胞肺がんに使用されます。

MET阻害薬(薬品名:カプマチニブ)

がん細胞の中に変異したMET遺伝子が含まれるとがん細胞を増殖、転移させる信号を出してしまいます。

MET阻害薬はその信号を止める役割があり、非小細胞肺がんに使用できます。

EGRF阻害薬(薬品名:ゲフィチニブ)

EGRF遺伝子変異が認められる非小細胞肺がん、膵がんで使用します。

がん細胞の増殖を抑え、がんを小さくします。

ALK阻害薬(薬品名:アレセンサ)

ALK融合遺伝子による非小細胞肺がん、未分化大細胞リンパ腫に使用します。

がん細胞の増殖を抑え、小さくしますが、薬の耐性をつけて利かなくなることがあります。

関連記事:抗がん剤治療の副作用や費用について解説

分子標的薬のメリット

分子標的薬

正常細胞への影響が少ない

分子標的薬はがん細胞だけを特定して攻撃するため、正常細胞への影響が最小限に抑えられます。

これにより、従来の抗がん剤に比べて副作用が少なく、患者様の生活の質を維持しやすくなります。

高い治療効果を期待できる

がん細胞の特定の分子や遺伝子変異をターゲットとするため、高い治療効果が期待できます。

特に、がんの進行を抑えたり、腫瘍を縮小させる効果があります。

個別化医療の実現につながる

患者様一人一人のがんの特性に合わせた治療が可能になるため、個別化医療の実現につながります。

これにより、より効果的で適切な治療が提供されることが期待されます。

分子標的薬でがんは完治する?

分子標的薬

分子標的薬は高い治療効果を発揮する一方で、それだけでがんを完治させるのは難しいとされています。

がん細胞は時間とともに耐性を持つことがあり、分子標的薬だけでは全てのがん細胞を完全に消滅させることはできません。

そのため、以下などの他の治療法との併用が一般的です。

  • 手術療法
  • 放射線療法
  • 化学療法

関連記事:胃がんの症状を解説!胃潰瘍や胃炎との違いは?【早めの検診を】

分子標的薬の副作用やデメリット

分子標的薬

分子標的薬は種類によってさまざまな副作用が現れます。

EGFR阻害薬

  • 皮膚症状:ニキビのような皮膚炎、かゆみ、皮膚の乾燥、爪囲炎(爪の周囲がはがれる)など
  • 肺の障害:間質性肺炎など

ALK阻害薬

  • 肝機能障害
  • 視覚障害
  • 血管新生阻害薬
  • 高血圧
  • タンパク尿
  • 鼻出血

BRAF阻害薬

皮膚症状:皮疹、光過敏症など

MEK阻害薬

  • 消化器症状:下痢、悪心、嘔吐など
  • 皮膚症状:皮膚の乾燥、発疹

ROS1/TRK阻害薬

神経系症状:目のかすみや視力の低下など

TRK阻害薬

  • 消化器症状:下痢、便秘など
  • 神経系症状:頭痛、めまい

RET阻害薬

  • 消化器症状:下痢、便秘、悪心
  • 甲状腺機能異常

高額な費用

分子標的薬は非常に高価であることが多く、治療費が大きな負担になることがあります。

特定の患者にのみ効果がある

分子標的薬は特定の遺伝子変異や分子特性を持つがんにのみ効果があるため、すべての患者に適用できるわけではありません。

薬剤耐性の発生

分子標的薬を使用するうちに、がん細胞が薬に耐性を持つようになることがあります。

その結果、薬の効果が低下する可能性があります。

長期的な安全性が不明な場合がある

一部の分子標的薬は比較的新しい治療法であり、長期的な使用による安全性が完全には確立されていないことがあります。

複雑な管理とモニタリング

効果的に使用するためには、患者の遺伝子や病状を細かく評価し、治療中も継続的にモニタリングする必要があります。

千葉内科・在宅クリニックでできるがんへの対応

千葉内科・在宅クリニックでは、様々な病気に対する包括的な医療サービスを提供しています。

しかし、抗がん剤治療や分子標的薬については専門的な対応が難しい場合があります。

そのような場合は適切な医療機関への紹介や、その後のフォローアップを行います。

がん治療に関するご相談やご質問がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

まとめ

分子標的薬はがん治療において重要な役割を果たす新しい治療法です。

がん細胞に特有の分子や遺伝子異常を狙い撃ちすることで、正常細胞への影響を最小限に抑えつつ、高い治療効果を発揮します。

ただし、がんの完治には他の治療法との併用が必要であり、副作用にも注意が必要です。

分子標的薬を積極的に用いるかどうかは、患者様の状況やがんの特性に基づいて慎重に判断されるべきです。

参考文献

分子標的薬とは?|バイオのはなし|中外製薬

薬物療法 もっと詳しく:[国立がん研究センター がん情報サービス

Q43分子標的治療薬の副作用や注意したほうがよいことにはどのようなものがあるでしょうか

この記事の監修医師


千葉内科・在宅クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)

経歴

  • 三重大学医学部医学科 卒業
  • 四日市羽津医療センター
  • 西春内科・在宅クリニック
  • 千葉内科・在宅クリニック院長

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