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末期がんの悪液質とは?症状や余命への影響を解説

悪液質

こんにちは!千葉内科・在宅クリニックの辺士名です!

がん悪液質(Cancer Cachexia)とは、がんが原因で生じる体重減少、筋肉の減少、疲労感などの症状を特徴とする重篤な状態です。

がん悪液質は、がんの進行に伴い、治療の効果を低下させるほか、患者さんの生活の質を著しく悪化させ、予後を不良にすることが知られています。

今回はその、がん悪液質について、どのような症状があるのか、療法などをお話ししていきます!

悪液質とは

悪液質

がん悪液質は、単に食欲がないというだけではなく、体がエネルギーを作る過程に異常が生じることが原因です。

特に、がん細胞が分泌するさまざまな因子によって正常な代謝が乱れ、筋肉や脂肪組織が分解されます。

これにより、体重が減少し、筋肉量が低下し、全体的な体力の低下を招きます。

がん悪液質は前悪液質、悪液質、不応性悪液質の3つのステージに分類され,最初のステージである前悪液質からの早期介入が必要です。

関連記事:末期がんによく見られる症状とは?急に悪化するのは死の兆候?

悪液質の症状とは

悪液質

がんの悪液質に関連する症状は多岐にわたり、患者さんの生活の質に大きな影響を与えます。

以下に、主な症状について簡潔に説明します。

全体的な体重減少

がんの悪液質において最も顕著な症状の一つが体重減少です。

これは、筋肉組織の分解が進むことと、脂肪組織の減少が原因です。

体のエネルギー需要が、がん細胞によって高まり、栄養摂取が追い付かないことから生じます。

疼痛

がん患者において疼痛は一般的な問題であり、特に進行がんでは悪液質の進行に伴って疼痛が増すことがあります。

がん細胞が周囲の組織や神経を侵すことで疼痛が引き起こされることが多いです。

食欲不振

食欲不振はがん悪液質の典型的な症状で、患者の栄養状態をさらに悪化させます。

これは、がん細胞が分泌するサイトカインが直接的に食欲を抑制したり、消化器官の機能障害が間接的に食欲不振を引き起こすことが原因です。

貧血

がん悪液質の患者はしばしば貧血を経験します。

これは、栄養不足、慢性の炎症反応、およびがん治療(化学療法や放射線療法)による骨髄の抑制により赤血球の生産が減少するためです。

頻繁な感染症

免疫機能の低下もがん悪液質の一環であり、これにより患者は感染症にかかりやすくなります。

栄養不足と慢性炎症は免疫細胞の機能を低下させ、様々な感染症のリスクを高めます

悪液質

悪液質で顔貌が変わる?

がんの悪液質による顔貌の変化は見られることがあります。

特に顕著なのは、顔や体の筋肉の減少による「やつれ」の状態です。

この筋肉減少は、顔の形状を支える構造にも影響を与え、頬がこけたり、顔全体の輪郭が変わったりします。

さらに、栄養不足による皮膚の健康状態の低下も見られ、皮膚が薄く、乾燥し、弾力を失うことがあります。

関連記事:肺がんの気をつけてほしい初期症状や原因、ステージ(進行度)について

悪液質の治療法

悪液質

がん悪液質に対する支持療法は、薬物療法に加えて、患者の身体機能に合わせた運動療法、適切な栄養管理、身体的・心理的負担に対する心理社会的介入など集学的な対応が必要です。

栄養療法

がん悪液質における栄養療法は、カロリーとタンパク質の摂取を増やすことが中心です。

高カロリー、高タンパク質の食事を小まめに摂ることで、体重減少を防ぎ、筋肉量の維持を図ります。

また、食欲がない場合は、液体食やスムージーなど、消化吸収が容易な形態の食事を取り入れることが有効です。

運動療法

定期的な軽い運動は、筋肉の減少を抑え、全体的な体力の低下を防ぐのに役立ちます。

ウォーキングや水泳、軽いストレッチなど、患者の体力に合わせた運動を推奨します。

運動は、食欲を促進し、精神的な健康を向上させる効果もあります。

薬物療法

サイトカインの影響を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬が用いられることがあります。

また、プロゲステロン類似薬(メゲストロールアセテートなど)や抗うつ薬も使用することがあり、食欲増進や体重増加に効果的です。

これらの薬物は、サイトカインの産生を抑制し、筋肉分解を防ぐことで、悪液質の進行を遅らせることが期待されます。

またアナモレリンという世界初のがん悪液質治療薬があります。

グレリンとレプチンという食欲を調節する代表的なホルモンがあり、アナモレリンはグレリン様の作用を有する薬物です。

グレリンは胃から分泌され食欲亢進、レプチンは脂肪細胞から分泌され食欲抑制に働きます。

視床下部および下垂体に発現する成長ホルモン放出促進因子受容体(GHS-R1a)に作用し、食欲亢進、筋肉量増加による体重増加効果が認められています。

がん悪液質を適応症とする薬としては世界初です(現在、適応のあるがんの種類は非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんです)。

アナモレリンの作用で筋肉量は増加するが、それだけで筋力が回復するわけではないため、適切な運動療法を併用する必要です。

⚠️また、アナモレリンは心不全、心筋梗塞・狭心症、刺激伝導系障害(完全房室ブロックなど)などの心機能障害のある患者には禁忌とされています。

サプリメント

オメガ3脂肪酸やビタミンD、クレアチンなどのサプリメントが悪液質の管理に利用されることがあります。

これらのサプリメントは、筋肉の損失を防ぎ、免疫機能を強化し、炎症反応を抑制する助けになると考えられています。

ただし、使用する前には医師と相談することが重要です。

悪液質と余命の関係性

悪液質

がん悪液質は、がん患者の余命に大きな影響を与えることが知られています。

この状態は、体重の著しい減少、筋肉量の低下、全身の疲労感といった特徴を持ち、これらは患者の全体的な体力と健康状態を低下させます。

具体的にはがん悪液質を持つ患者は、そうでない患者に比べて予後が悪い傾向にあり、治療への耐性が低下するため、治療の選択肢が限られがちです。

体力の低下と感染症リスクの増加

悪液質状態にある患者は免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります

これがさらに健康状態を損ない、余命を短縮する可能性があります。

治療の適用制限

重度の悪液質を呈する患者は、化学療法や放射線療法などの積極的な治療が困難になることがあります。

これにより、がんの進行を抑えるチャンスが減少します。

生活の質の低下

悪液質による体力の低下は、日常生活の質を大幅に低下させ、これがさらに健康状態を悪化させる可能性があります。

関連記事:ホスピスとは?入院の条件は?

悪液質から回復した事例はある?

悪液質

がん悪液質の完全な回復事例は珍しいですが、症状の管理と改善には成功している例は多く報告されています。

がん悪液質の症状の改善には総合的なアプローチが必要で、栄養療法、運動療法、薬物療法が組み合わされます

一つの実例をご紹介します。

ある研究では、がん悪液質の患者に対して栄養サポートと併せて運動プログラムを実施した結果、筋力の向上、体重の増加、生活の質の向上が報告されました。

このような総合的なアプローチは、悪液質の進行を遅らせるだけでなく、一部の患者においては顕著な改善をもたらすことが示されています。

これらの研究結果からもわかるように、がん悪液質の管理と治療は、患者の総合的な治療計画の重要な部分です。

適切な介入によって生活の質の向上とともに治療成績の向上が期待できます。

千葉内科・在宅クリニックでできる対応

千葉内科・在宅クリニックでは、がんの患者様に対して治療から緩和ケアまで適切な内服薬や外用薬・鎮痛薬の処方ができます!

痛みが辛い・呼吸が苦しいと言った症状を始め、急に症状がでてきたなど、不安なことがあればいつでもご相談ください!

悪液質のまとめ

いかがでしたか?

なかなか聞きなれない悪液質というワードですが、がん患者の方の生命予後に大きく関与しています。

悪液質について専門的に知りたい場合などは、千葉内科・在宅クリニックへお気軽にお問い合わせください!

参考文献

がん悪液質の定義と分類:国際的なコンセンサス

悪液質:新しい定義

がん悪液質のメカニズム

栄養失調のがん患者に対する経口栄養介入:系統的レビューとメタ分析

がん悪液質: メディエーター、シグナル伝達、代謝経路

がん関連体重減少の分類の診断基準

癌悪液質における非ステロイド性抗炎症治療:体系的な文献レビュー

悪液質とサルコペニア:メカニズムと介入の潜在的標的

がん悪液質に対する薬理学的戦略の進歩

この記事の監修医師


千葉内科・在宅クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)

経歴

  • 三重大学医学部医学科 卒業
  • 四日市羽津医療センター
  • 西春内科・在宅クリニック
  • 千葉内科・在宅クリニック院長

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