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疼痛コントロールはどう行う?慢性痛に役立つ治療とケア方法
「痛みが続いてつらい」
「年齢のせいだから仕方ないと思っている」
「薬を飲んでいるけれど、思うように楽にならない」
このような長引く痛み(慢性痛)で悩んでいる方は、決して少なくありません。
疼痛(とうつう)コントロールとは、痛みをゼロにすることだけを目標にするのではなく、【生活をできるだけ普段通り送れるようにする】ための医療です。
この記事では医師の立場から、疼痛コントロールの重要性や薬による治療、自宅でできるケア方法について解説します。
Contents
疼痛コントロールの重要性
以下のような悪循環が起こると、人は自然と動かなくなります。

また、慢性痛は以下など、心や生活全体に影響します。
- 夜眠れない
- 食欲が落ちる
- 気持ちが沈む
- 外出や会話が減る
だからこそ疼痛コントロールは、「痛みの治療」+「生活の立て直し」として考えることが大切です。
薬物療法による疼痛コントロール
疼痛コントロールでは、薬物療法が治療の中心となります。
現在の医療では、強い薬を最初から使用したり、痛みを我慢し続けたりする対応は推奨されていません。
痛みは、強さや性質、年齢や生活状況によって適切な治療が変わります。
そのため、痛みの状態に応じて薬を段階的に使い分けることが基本になります。
薬を選ぶ際は、次のような点を総合的に判断します。
- 痛みの強さ
- 痛みの性質(炎症性か、神経障害性か)
- 年齢・持病・生活状況
薬物療法の目的は、痛みを我慢させることではありません。
日常生活に支障が出ない状態を維持することが、疼痛コントロールの目標です。
関連記事:緩和ケアとホスピスの違いとは?
疼痛ラダー(WHO方式)とは?
疼痛ラダーとは、世界保健機関(WHO)が示した疼痛治療の基本的な枠組みです。

疼痛ラダーは痛みの変化に合わせて治療を見直すための指標として、階段の構造で整理されています。
軽い痛みには比較的負担の少ない薬を使用し、痛みが強くなる場合には治療内容を一段ずつ引き上げます。
第1段階:軽い痛み|非オピオイド鎮痛薬
第1段階では、日常生活に大きな支障が出ていない軽い痛みを対象に非オピオイド鎮痛薬を使用した治療を行います。
関節や筋肉の違和感、動作時に感じる初期の痛みなどに対し、炎症を抑えたり、痛みを和らげたりすることを目的とした疼痛治療です。
痛みが出たときだけ薬を使用する方法だけでなく、生活に支障が出る前に計画的に使用することで、症状の悪化を防げる場合もあります。
高齢者や持病のある場合には、胃や腎臓への影響を考慮し、薬の種類や用量を調整します。
主に使用される薬は以下の通りです。
- アセトアミノフェン
- NSAIDs(ロキソプロフェン、セレコキシブなど)
第2段階:中等度の痛み|弱オピオイド+非オピオイド
第2段階では、日常生活に支障が出始めている中等度の痛みを対象に、非オピオイド鎮痛薬に加えて弱オピオイドを併用した治療を行います。
第1段階の治療では十分な効果が得られない場合や痛みによって睡眠や日常動作が妨げられる場合が該当します。
弱オピオイドに対して不安を感じる患者も少なくありませんが、適切に使用すれば過度に恐れる必要はありません。
弱オピオイドは、痛みの感じ方を調整する作用があり、痛みの質が変化してきた場合に選択されます。
医師の管理下で用量を調整しながら使用することで、安全性を確保しつつ疼痛コントロールを行います。
便秘や吐き気、眠気などの副作用が出やすいため、副作用を軽減する薬を併用しながら治療を進めることが一般的です。
主に使用される薬は以下の通りです。
- トラマドール
- アセトアミノフェン
- NSAIDs
第3段階:強い痛み|強オピオイド+補助薬
第3段階では、強い痛みによって日常生活が成り立たない場合を対象に、強オピオイドを中心に、必要に応じて補助薬を併用した治療を行います。
がん性疼痛や他の治療では十分な効果が得られない慢性の強い痛みが該当します。
強オピオイドに対する依存を心配する声も少なくありません。
一方で、痛みを放置することによる影響の方が問題になる場合もあります。
そのため、 少量から開始し、効果や副作用を確認しながら段階的に調整します。
強オピオイドは痛みを強力に抑える作用があり、適切な管理のもとで使用することで生活の質の改善が期待できる治療です。
主に使用される薬は以下の通りです。
- モルヒネ
- オキシコドン
- フェンタニル貼付剤 など
疼痛ラダーは一方向ではない
疼痛ラダーは、上に進むだけの仕組みではありません。
痛みの状態が変われば、治療内容を見直すことが前提です。
治療によって痛みが軽減した場合、使用する薬の段階を下げる選択も行われます。
状態の変化に合わせて、薬の量を減らしたり、別の薬へ切り替えたりする調整をします。
関連記事:末期がんによく見られる症状とは?急に悪化するのは死の兆候?
薬物療法による疼痛コントロール
疼痛コントロールでは、痛みの強さだけでなく、痛みの種類を見極めることが重要です。
炎症や組織の損傷による痛みは、動かしたときに強くなったり、押すと痛んだりする特徴があります。
このタイプの痛みには、炎症を抑える作用を持つ薬であるNSAIDs・アセトアミノフェンが中心となります。
一方、神経が関係する痛みは、ビリビリする、電気が走るように感じるなどの症状がみられます。
一般的な痛み止めでは十分な効果が得られにくい場合があり、補助薬(鎮痛補助薬)など別の薬を組み合わせて対応します。
痛みの性質に合わない薬を使い続けると、効果を実感しにくくなるため、症状の特徴を整理したうえで薬を選択することが欠かせません。
鎮痛補助薬(アジュバント鎮痛薬)
鎮痛補助薬は、通常の痛み止めだけでは十分な効果が得られない場合に、治療を補助する目的で使用される薬です。
神経が関係する痛みでは、一般的な鎮痛薬のみで対応するのが難しいことも多いため、鎮痛補助薬を併用します。
代表的な鎮痛補助薬には、神経障害性疼痛の治療薬や抗うつ薬があります。
神経障害性疼痛治療薬であるプレガバリンやミロガバリンは、神経の過剰な興奮を抑える作用を持ち、ビリビリする痛みや電気が走るような痛みに用いられる薬です。
一方、デュロキセチンやアミトリプチリンなどの抗うつ薬は、痛みの伝達を調整する作用を利用し、慢性的な痛みの緩和を目的として使用されます。
鎮痛補助薬は、効果が現れるまでに数日から数週間を要する場合もあるため、経過を確認しながら使用します。
副作用の出方には個人差がありますが、 眠気やふらつきなどが現れることがあるため注意が必要です。
副作用が現れたときは医師へ相談し、状態に応じて、用量や薬剤の調整を行いましょう。
貼り薬・外用薬の役割
貼り薬や外用薬は、痛みの部位がはっきりしている場合に用いられる治療手段です。
内服薬とは異なり、作用する範囲が比較的限定されます。
貼り薬や外用薬は、皮膚から有効成分を浸透させ、痛む部位へ直接作用させる目的で用いられます。
そのため、炎症や痛みが局所に集中している状況では、外用薬が選択されることも少なくありません。
内服薬に比べて全身への影響が少ないため、副作用のリスクを抑えたい場合の選択肢となります。
高齢者や、内服薬の使用に注意が必要なケースでも取り入れやすい治療法です。
一方で、貼り薬や外用薬のみでは十分な疼痛コントロールが得られない場合もあります。
貼り薬や外用薬は、痛みを管理するための補助的な手段のため、内服薬や他の治療と組み合わせて使用されます。
薬物療法で大切な3つの考え方
疼痛コントロールにおいて、薬物療法は痛みを和らげるための重要な手段です。
ただし、薬を使うこと自体が目的になるわけではありません。
まず大切なのは、痛みを我慢し続けないことです。
痛みを放置すると、脳が痛みを記憶し、慢性化しやすくなる傾向があります。
次に、薬が効かないと感じた場合でも、すぐに治療が失敗だと判断する必要はありません。
痛みの種類に対して薬が合っていない、用量が適切でない、薬の組み合わせを見直す必要があるなど、調整の余地が残されていることもあります。
また、副作用が出た場合は、無理に我慢しないことが重要です。
眠気や便秘、ふらつきといった症状は、治療内容を調整するためのサインになります。
気になる変化があれば、早めに医師へ相談してください。
症状や生活状況を踏まえながら、薬の種類や量を調整し、治療を続けていきます。
非薬物療法による疼痛コントロール
疼痛コントロールでは、薬物療法だけでなく、日常生活の中で行うケアも重要です。
自宅で無理なく続けられる非薬物療法を取り入れることで、痛みの軽減や悪化の予防につながることがあります。
温める(温罨法)
温めるケアは、筋肉のこわばりを和らげ、血流を促す目的で行われます。
腰や肩、関節の痛みなど、動かすとつらさを感じる症状に対して有効な場合があります。
ただし、長時間の使用や高温での加温は低温やけどの原因になります。
一回あたり10〜15分程度を目安に、心地よいと感じる温度で行ってください。
軽い運動・ストレッチ
痛みがある場合でも、体をまったく動かさない状態が続くと、筋力の低下や関節のこわばりにつながりやすくなります。
そのため、痛みが出ない範囲で行える軽い運動やストレッチを取り入れることが大切です。
おすすめできる運動・ストレッチは以下の通りです。
椅子に座ったまま行う太もも裏ストレッチ

椅子に座ったまま片脚を前に伸ばし、上体を軽く前に倒すストレッチは、太もも裏の筋肉を無理なく伸ばす方法です。
10〜20秒ほど姿勢を保ち、左右それぞれ2〜3回を目安に行います。
強い痛みを感じる場合は中止し、痛みの出ない範囲で調整してください。
肩甲骨をゆっくり動かす肩回し体操

この体操は、肩甲骨まわりの筋肉をやさしく動かし、肩や首のこわばりを和らげることを目的とした運動です。
肩甲骨の動きが悪くなると、肩こりや首の痛みが強くなりやすく、腕を動かす際にも負担がかかります。
椅子に座った状態で背筋を軽く伸ばし、両肩をすくめるように持ち上げたあと、力を抜いてストンと下ろします。
その動きを繰り返しながら、肩を前から後ろへ円を描くようにゆっくり回してください。
前回し・後ろ回しをそれぞれ5回程度行い、全体で1〜2セットを目安にします。
朝起きたあとや、長時間同じ姿勢が続いたあと、入浴後など体が温まっているタイミングに行うと取り入れやすくなります。
反動をつけず、呼吸を止めないことを意識し、痛みを感じない範囲で行ってください。
壁を使ったふくらはぎストレッチ

このストレッチは、ふくらはぎの筋肉をゆるめ、歩行時や立ち上がり動作の負担を軽くすることを目的としたものです。
壁の前に立ち、両手を壁につけて体を支えます。
片脚を後ろに引き、かかとを床につけたまま、前脚の膝をゆっくり曲げていく姿勢を取ります。
後ろ脚のふくらはぎが心地よく伸びている感覚を意識して行いましょう。
この時、強く伸ばしすぎないよう注意してください。
姿勢を保つ時間は10〜20秒程度が目安に左右それぞれ2〜3回行います。
歩行時にふくらはぎの張りやだるさを感じやすい方や、長時間立つことが多い方でも取り入れやすいストレッチです。
入浴後など体が温まっているタイミングに行うと、無理なく続けやすくなります。
睡眠と生活リズム
睡眠の質は、痛みの感じ方と深く関係しています。
起床時間をできるだけ一定に保つことで、体内リズムが整いやすくなります。
また、就寝前のスマートフォン操作を控えるなど、眠りに入りやすい環境を整えることも重要です。
睡眠の質が向上すると、痛みに対する感受性が和らぐことがあります。
リラクゼーション・心のケア
慢性的な痛みは、決して気のせいではありません。
ただし、不安や緊張が強い状態では、痛みをより強く感じやすくなる傾向があります。
深呼吸を意識したり、安心できる時間をつくったりすることも、疼痛コントロールの一部です。
心身をリラックスさせる習慣を取り入れることで、痛みと向き合いやすくなります。
在宅医療でできる疼痛コントロール
「痛みがつらいものの、通院そのものが大きな負担になっている」
「薬の調整が必要でも、何度も病院へ行くのは難しい」
このような状況にある方にとって、在宅医療は有効な選択肢の一つです。
在宅医療では、医師や看護師が自宅を訪問し、生活環境を踏まえたうえで痛みの状態を評価します。
その結果をもとに、薬の種類や量を細かく調整し、便秘や眠気といった副作用への対応も含めて継続的な管理を行います。
また、訪問看護師やケアマネージャーと連携しながら、医療と介護の両面から支援を行う点も在宅医療の特徴です。
複数の職種が関わることで、患者さん本人だけでなく、ご家族の負担軽減にもつながります。
関連記事:訪問診療とは?診療の内容や受診すべき人の特徴などについて解説
疼痛の受診の目安
痛みの多くは経過を見ながら対応できることもありますが、なかには早急な対応が必要となるケースもあります。
ここでは、すぐに相談や受診を検討すべき痛みと、早めの相談が望ましい痛みに分けて整理します。
すぐに相談・受診が必要な痛み
次のような症状がみられる場合は、自己判断せず、速やかに医療機関へ相談してください。
状況によっては救急受診が必要となることもあります。
- 今までに経験したことのない強い痛み
- 安静にしていても改善しない痛み
- 発熱や意識の変化、手足のしびれを伴う痛み
- 胸や背中に起こる激しい痛み
- 転倒や事故のあとに悪化していく痛み
これらの症状では、重い病気や緊急性の高い状態が隠れている可能性があります。
早めに相談したほうがよい痛み
命に関わる緊急性は低くても、我慢を続けることで生活の質が大きく低下する痛みもあります。
次のような状態が続いている場合は、早めに医師へ相談することが望ましいです。
- 数週間以上続いている痛み
- 夜眠れないほどの痛み
- これまで効いていた薬が効きにくくなってきた
- 薬の副作用がつらく、継続が難しい状態
- 痛みに対する不安が強く、日常生活に影響している場合
痛みは我慢を重ねるほど慢性化しやすく、治療の調整に時間がかかることもあります。
受診の判断に迷う場合でも、早めに専門家へ相談することが重要です。
関連記事:高齢者における慢性疼痛とは?痛みの特徴や治療について解説
疼痛に関するよくある質問
Q. 痛み止めは毎日飲んでも大丈夫?
A. 痛みの種類や強さ、体の状態によって適切な使い方は異なります。
自己判断で続けるのではなく、効果や副作用を確認しながら、医師と相談して調整することが大切です。
Q. 我慢した方が体に良い?
A. 痛みを我慢し続けることで、かえって痛みが慢性化しやすくなる場合があります。
生活に支障が出ている場合は、早めに医師へ相談しましょう。
Q. 在宅医療は重症の人だけ?
A. 在宅医療は、必ずしも重症の方だけを対象としたものではありません。
通院そのものが負担になっている方や、痛みの調整を継続的に行う必要がある方も利用できます。
千葉内科在宅・美容皮膚科クリニックでできること
痛みを抱えたままの在宅療養に、つらさや不安を感じていませんか。
千葉内科在宅・美容皮膚科クリニックでは、緩和ケアの資格を持つ医師が、慢性痛やがん性疼痛、神経痛などの疼痛コントロールを大切にした在宅医療を行っています。
通院が難しい場合でも、ご自宅で診療を受けることができます。
痛みの状態や日々の生活をふまえながら、薬の調整や副作用への対応を含めて、無理のない形でサポートします。
たとえば、次のようなお悩みがある方はご相談ください。
- 通院が負担になってきた
- 夜間の痛みで眠れないことがある
- 今の薬が合っているのか不安がある
まとめ
痛みは我慢するものだと考えてしまいがちですが、無理を重ねることで生活の負担が大きくなることもあります。
通院や治療の方法は一つではなく、生活に合わせた選択肢を取ることも可能です。
「このままでいいのか」と迷ったときは、早めに専門家へ相談することが、負担を減らすきっかけになります。
自分に合った形で、無理のない疼痛コントロールを考えていくことが大切です。

千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)
経歴
- 三重大学医学部医学科 卒業
- 四日市羽津医療センター
- 西春内科・在宅クリニック
- 千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック院長