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口唇ヘルペスの治療法を医師が解説|放置のリスクと回復を早めるポイント
「唇がピリピリすると思ったら、水ぶくれが出てきた…」
「疲れるといつも同じ場所にヘルペスができる」
こういった症状の多くは、口唇ヘルペス(単純ヘルペスウイルス1型:HSV-1)によるものです。
口唇ヘルペスはとても身近な病気で、日本人の多くが子どもの頃までにウイルスに感染していると言われています。
本記事では口唇ヘルペスの治療法や早く治すためのポイント、似ている病気などについて解説します。
口唇ヘルペスの治療法
基本となる治療は「抗ウイルス薬」です。
「細菌」に効く抗生物質とは違い、ヘルペスウイルスの増殖を抑える専用のお薬を使います。
抗ウイルス薬の内服治療
もっとも効果が高く、標準的な治療 が「飲み薬(内服)」です。
代表的な薬は以下のようなものです。
- アシクロビル(ゾビラックス®など)
- バラシクロビル(バルトレックス®)
- ファムシクロビル(ファムビル®)
これらは、ウイルスが増えるのに必要な酵素を邪魔することで、ウイルスの増殖スピードを抑え、症状が軽く短く済むようにする作用があります。
内服薬がおすすめな人
- 痛みが強い
- 水ぶくれの範囲が広い
- 初めての発症でつらい
- くり返し再発して日常生活に支障がある
- 免疫力が落ちている(糖尿病・ステロイド内服・がん治療中など)
上記に該当する方は、塗り薬だけよりも内服を併用した方がメリットが大きいことが多いです。
抗ウイルス薬の外用治療(塗り薬)
比較的「軽い」「範囲が狭い」口唇ヘルペスでは、外用の抗ウイルス薬(塗り薬) だけで様子を見ることもあります。
代表的な処方薬(医療機関で処方)は以下などがあります。
- アラセナ-A軟膏/クリーム(ビダラビン)
- ゾビラックス軟膏(アシクロビル)
市販薬(再発時の使用を想定した第1類医薬品)では、以下などです。
- アラセナS軟膏/クリーム
- アクチビア軟膏(アシクロビル)
- ヘルペシアクリーム
外用薬だけでもある程度の効果は見込めますが、初感染や症状が強い場合は「内服+外用」の併用が望ましいとされています。
再発をくり返す場合の「予防内服(抑制療法)」
「年に何度もヘルペスが出て困っている」という方には、再発を防ぐための内服治療(抑制療法) という選択肢もあります。
海外のガイドラインでは、以下などを数ヶ月以上続けることで、再発回数を大きく減らせたという報告があります。
- バラシクロビル 500mg 1日1回
- アシクロビル 400mg 1日2回
日本でも、年に6回以上再発する。大事な予定がある。といったケースでは、皮膚科・内科で相談のうえ検討されることがあります。
関連記事:口唇ヘルペスを最短で治すには?おすすめの市販薬を紹介!
口唇ヘルペスを早く治すためのポイント
治療のメインはあくまで抗ウイルス薬ですが、生活面の工夫で回復速度や再発頻度が変わります。
とにかく「早く」治療を始める
- ピリピリ
- チクチク
- かゆい
といった違和感が出た時点が、治療スタートのベストタイミングです。
内服薬、外用薬どちらも、このタイミングで治療を開始することでコントロールが一気にしやすくなります。
多くのガイドラインでも「発症からできるだけ早く(目安として5日以内)」の開始が推奨されています。
体調管理・免疫ケアをする
口唇ヘルペスの再発のきっかけとして多いのは、以下など、「免疫力が落ちている状態」です。
- 強い疲労・睡眠不足
- 風邪・発熱
- 過度のストレス
- 生理、ホルモンバランスの変化
ヘルペスが出たということは、「体が疲れているサイン」と考えて、いつもよりしっかりと休むことを意識してバランスの良い食事をとりましょう。
アルコールや喫煙を控えることも重要です。
患部に触れない・広げない
口唇ヘルペスの水ぶくれの中には、大量のウイルス が含まれています。
指でさわる、水ぶくれを潰す、掻きむしるなどをすると、他の部位(鼻の周り・顎・目の周り)や周囲の人へうつしてしまう原因になります。
患部を触ってしまった場合、すぐに石鹸で手洗いを行い感染を広げないようにしましょう。
特に 乳幼児・妊婦・免疫不全の方 にはうつさないよう、より慎重な対応が必要です。
紫外線・物理的刺激を避ける
冬の乾燥や冷たい風、日焼け、マスクなどによるこすれなども、再発のきっかけになりやすいとされています。
可能であれば、SPF入りのリップクリームや帽子、日傘などを活用して刺激を減らしておくと、再発予防にもつながります。
関連記事:免疫力を高める方法や食べ物について|低下してしまう原因も解説
口唇ヘルペスと似ている病気との違い
口唇ヘルペスは見た目が似ている皮膚トラブルと混同されやすく、「本当にヘルペスなのか?」と迷うことがあります。
ここでは、代表的な疾患と口唇ヘルペスとの違いを整理します。
| 病気名 | 場所 | 見た目 | 痛み |
| 口唇ヘルペス | 唇・唇の周囲・口元 | 小さな水ぶくれ(水疱)が複数まとまって現れ、破れてかさぶたになる | ピリピリ・チクチクする前兆があり、触れると痛みが出る |
| 口内炎 | 唇の内側・頬の内側・舌の側面など口の中 | 白〜黄色っぽい浅い潰瘍で、えぐれた傷のように見える | しみるような痛みが出やすい |
| 口角炎 | 口角(口の端) | 赤み・ひび割れ・ただれ・かさぶた | 口を開けると痛むことがある |
| ニキビ | 口元・唇の周囲の皮膚 | 赤く腫れた発疹や白い膿を伴うことがある | 押すと痛むことがある |
| 帯状疱疹 | 口元を含む顔・体の片側 | 赤い発疹や水疱が帯状に並ぶことがある | ヒリヒリ・ズキズキとした強い痛みを伴うことがある |
口内炎
口内炎は口の中にできる潰瘍性の炎症で、ヘルペスのような水ぶくれが集まって現れることはありません。
また、主な原因はストレスや免疫低下、口腔内の傷などで、ウイルス感染ではないケースが多い点も特徴です。
関連記事:口内炎に効くおすすめの市販薬ランキング|選ぶときのポイントや治らない場合の対応は?
口角炎
口角炎は、口の端に赤みやひび割れが生じる炎症で、乾燥や細菌・真菌感染、栄養不足などが原因となることがあります。
ヘルペス特有のピリピリした前兆や水疱の多発が起こりにくい点が違いです。
ニキビ
ニキビは毛穴の詰まりや皮脂分泌の乱れが原因で生じる皮膚トラブルです。
ヘルペスのように小さな水疱がまとまって現れることはなく、前兆症状も出にくい点が見分けるポイントです。
帯状疱疹
帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルスが再活性化して起こる疾患で、顔や体の片側に沿って発疹や水疱が帯状に現れるのが特徴です。
口唇ヘルペスと異なり、広い範囲に痛みを伴う発疹が出やすく、痛みが強く長引くケースがある点が鑑別のポイントになります。
関連記事:帯状疱疹の前兆や初期症状とは?治療やヘルペスとの違いについて
口唇ヘルペスのよくある質問
Q.口唇ヘルペスは人へうつりますか?
A.はい、うつります。
主な感染経路は、唾液や水ぶくれの中身が相手の粘膜や傷口に触れることです。
例えば、キスをする、同じ食器を使う、タオルやリップクリームを共用するといった行為は、感染リスクを高めます。
特に水ぶくれがある時期はウイルス量が多く、最も感染しやすいタイミングです。
一方で、かさぶたになり完全に乾いた段階では、感染力はかなり低くなります。
Q.口唇ヘルペスになった場合、市販薬を使用して問題ないですか?
A.過去に医師から口唇ヘルペスと診断されており、「いつもの再発」と自覚できる軽症の場合は、市販の抗ウイルス外用薬を使用して様子を見るという選択肢もあります。
ただし、次のような場合は自己判断で市販薬のみに頼らず、医療機関の受診が推奨されます。
- 初めてヘルペスのような症状が出た場合
- 痛みが強い、または症状の範囲が広い場合
- 目・鼻の中・性器など、デリケートな部位に症状が及んでいる場合
- 1〜2週間経っても改善がみられない場合
- 持病などで免疫力が低下している場合
- 妊娠中・授乳中で不安がある場合
市販薬は「再発時の軽症例」を前提とした対処が中心です。
そのため、一度は医療機関で正確な診断を受けておくことが望ましいといえます。
Q.口唇ヘルペスはどのくらいで治りますか?
A.口唇ヘルペスは、ピリピリとした違和感から始まり、水ぶくれができ、その後かさぶたになって治癒するという経過をたどることが一般的です。
症状の進み方には個人差がありますが、典型的には次のような流れになります。
ピリピリ・違和感が出る段階が1日ほど続き、その後2〜3日程度で水ぶくれが現れます。
水ぶくれが破れてびらんになる時期が数日続き、かさぶたが形成されてから3〜7日ほどで落ち着いていきます。
全体として、治癒までに1〜2週間程度かかるケースが多いとされています。
抗ウイルス薬を早めに使用すると、痛みのピークが軽くなったり、かさぶたになるまでの期間がやや短くなったりする可能性があります。
Q.妊娠中・子どもに口唇ヘルペスが出たときは?
A.妊娠中に口唇ヘルペスが出た場合、胎児に直接影響することはまれとされています。
ただし、発熱が続く、全身のだるさが強いなど体調不良がある場合は、産科や内科で相談することが望ましいといえます。
抗ウイルス薬の使用については、妊娠週数や全身状態を踏まえたうえで医師が判断します。
子どもの場合、初感染では発熱を伴う歯肉口内炎を発症し、口の中の痛みが強くなることがあります。
痛みのために食事や水分摂取が難しくなっている場合は、早めに医療機関を受診してください。
新生児(生後1か月未満)の場合は重症化リスクが高いため、口唇ヘルペスが疑われる症状がある場合は速やかに受診が必要です。
千葉内科・在宅クリニックでできること
千葉内科・在宅クリニックでは、口唇ヘルペスに対して診察から治療、再発予防まで幅広く対応しています。
口唇ヘルペスが疑われる症状については、診察および鑑別診断を行い、必要に応じて抗ウイルス薬の内服薬や外用薬を処方します。
再発をくり返す方には、生活習慣の見直しや予防内服に関する相談も可能です。
また、目や性器など他の部位に症状が及んでいる可能性がある場合には、専門診療科への紹介を行います。
がん治療中やステロイド内服中など、免疫力が低下している方については、全身状態を踏まえたうえで慎重に評価・対応します。
在宅療養中の方に対しても、口唇ヘルペスの治療や疼痛管理を含めたサポートが可能です。
「これが本当にヘルペスかどうか自信がない」
「市販薬を使ってみたものの、なかなか改善しない」
といった場合も、遠慮なくご相談ください。
まとめ
口唇ヘルペスは、症状の出方や再発の頻度によって、対処の仕方が変わる病気です。
「いつものことだから」と自己判断で済ませてしまう方も少なくありませんが、症状が長引く場合や、これまでと違う経過をたどる場合には、医師の判断を仰ぐことが安心につながります。
また、体調や生活習慣、ストレスなどが症状に影響することもあるため、治療だけでなく日常の過ごし方を見直すことも、再発予防の一助になります。
「本当にヘルペスなのか迷っている」「市販薬で改善しない」と感じたときは、無理に我慢せず、専門家に相談することを検討してみてください。
引用・参考文献
- Ocampo JVCS, et al. Clinical guidelines for herpes labialis: recommendations for diagnosis and management. 2024.PMC
- UpToDate. Treatment and prevention of herpes simplex virus type 1 in immunocompetent adolescents and adults. Updated 2024.UpToDate
- anamne「口唇ヘルペスに効く市販薬」おうち病院
- 丸岡医院 皮膚科「口唇ヘルペスの症状・治療・予防法」医療法人 丸岡医院
- 厚生労働省 抗ウイルス剤関連資料(使用開始は発症から5日以内が望ましい旨)厚生労働省