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喘息治療に使う吸入薬とは?長期管理・発作治療に分けておすすめ吸入薬紹介

喘息は、呼吸器の慢性疾患であり、正しい治療を行うことで症状をコントロールできます。

その治療において重要なのが吸入薬の使用です。

本記事では、喘息治療に使われる吸入薬の種類や特徴、選び方について詳しく解説し、さらに発作時や長期管理におすすめの吸入薬についてもご紹介します。

Contents

喘息治療に使う吸入薬とは?

喘息治療における吸入薬は、喘息の症状をコントロールし、生活の質を向上させるための重要な治療手段です。

吸入薬は、薬剤を直接気道に届けることで、迅速かつ効率的に治療効果を発揮するのが特徴です。

吸入薬は、喘息の治療目的に応じて以下の2つの用途で使用されます。

長期管理

目的気道の慢性炎症を抑え、喘息の悪化や発作を予防します
対象定期的な管理が必要な患者
使用頻度通常は1日1~2回の定期使用が推奨されます

発作治療

目的喘息発作時の急性症状を速やかに改善します
対象急に息苦しくなるなどの症状が出現した患者
使用頻度必要時のみ使用します

関連記事:咳喘息は喘息ではない?違いや症状のチェック項目をご紹介

喘息治療に使用される吸入薬の種類

吸入ステロイド(ICS:Inhaled Corticosteroids)

効果気道の慢性炎症を抑え、発作を予防
使い方1日1~2回、定期的に使用
吸入後はうがいを行い、口腔カンジダ症を予防します
特徴長期管理の基本薬で効果は数日から数週間で現れます
代表薬フルタイド、パルミコート

長時間作用性β-2刺激薬(LABA:Long-Acting Beta-2 Agonists)

効果気道を長時間広げ、夜間や早朝の症状を改善
使い方1日1~2回※ICSとの併用が必須
特徴長期管理に効果的
単剤での使用は推奨されない
代表薬セレベント、オーキシス

長時間作用性抗コリン薬(LAMA:Long-Acting Muscarinic Antagonists)

効果副交感神経を抑制し、気道を広げる
使い方1日1回吸入
ICSやLABAと併用することが多い
特徴重症例や夜間の症状に有効
代表薬スピリーバ

短時間作用性β-2刺激薬(SABA:Short-Acting Beta-2 Agonists)

効果発作時に気道を速やかに広げる
使い方息苦しいときに必要な回数だけ吸入
特徴即効性があり数分以内に効果が現れる
代表薬メプチンエアー、ベロテック

短時間作用性副交感神経遮断薬(SAMA:Short-Acting Muscarinic Antagonists)

効果副交感神経を一時的に抑え、気道を広げる
使い方SABAと併用して使用することが多い
特徴肺気腫(COPD)にも使用されるが、喘息発作時にも有効
代表薬アトロベント

喘息治療に使われる吸入薬以外の薬

飲み薬

喘息治療における飲み薬は、吸入薬の補助的な役割を果たし、炎症を抑えたり気道を広げたりすることで、症状の安定化を図ります。

特に吸入薬だけでは十分な効果が得られない場合や、アレルギー性疾患を併発している患者にとって重要な治療法です。

以下では、主な飲み薬の種類とその特徴について詳しく説明します。

主な種類と効果

ロイコトリエン受容体拮抗薬

気道で炎症を引き起こすロイコトリエンという物質の働きを抑える薬です。

この薬は、気道のむくみを軽減するだけでなく、アレルギー性鼻炎にも効果があるため、喘息と鼻炎を併発している患者に適しています。

副作用は少ないですが、一部の患者で頭痛や不眠が報告されています。

代表薬:シングレア、キプレス

テオフィリン

気道の平滑筋を弛緩させて気管支を広げる作用があります。

慢性的な喘息症状の緩和に使用され、特に夜間や早朝の症状を改善する目的で用いられます。

ただし、吐き気や動悸などの副作用が発生することがあり、過量摂取には注意が必要です。

代表薬:テオドール、アミノフィリン

抗アレルギー薬

アレルギー反応を抑えることで喘息の引き金となるアレルギー性炎症を軽減します。

アレルギー性鼻炎や蕁麻疹の治療にも広く使用されるため、アレルギー性喘息の患者に特に有効です。

副作用として眠気や口の乾きが報告されています。

代表薬:アレグラ、ザイザル

貼り薬

喘息治療における貼り薬は、吸入薬や飲み薬と並ぶ補助的な治療法として使用されることがあります。

貼り薬は皮膚から薬剤を吸収することで効果を発揮し、気道を広げたり呼吸を楽にする作用を持っています。

特に、小児や高齢者など、吸入薬や飲み薬の使用が難しい患者に適しており、長時間作用する点が特徴です。

主な種類と効果

貼り薬は、皮膚に貼付することで薬剤が体内に吸収され、血液を通じて気道に作用します。

この仕組みにより、気道の筋肉を弛緩させることで気管支を広げ、呼吸を楽にする効果があります。

持続的に作用するため、夜間や長時間の症状コントロールにも適しています。

代表薬:ホクナリンテープ(ツロブテロールテープ)

注射薬

注射薬は、主に中等症から重症の患者に使用される治療法です。

吸入薬や飲み薬だけでは症状がコントロールできない場合や、急性増悪時に迅速な効果を得るために使用されます。

注射薬には、急性期の発作緩和を目的とする「ステロイド注射」と、特定の喘息タイプを対象とした「生物学的製剤」の2つの主要な種類があります。

これらの薬剤は、喘息治療の選択肢を広げ、特に難治性喘息の患者に新たな希望をもたらしています。

主な種類と効果

ステロイド注射

ステロイド注射は、強力な抗炎症作用を持つ薬剤で、急性増悪時に使用されます。

吸入ステロイドや飲み薬では対応が難しい激しい炎症を抑えるために、迅速に効果を発揮します。

短期間の使用が一般的で、医療施設で投与されることが多いです。

代表薬:ヒドロコルチゾン(ソル・コーテフ)、メチルプレドニゾロン(ソル・メドロール)

生物学的製剤

生物学的製剤は、喘息の根本的な原因となる分子や細胞を標的とした新しい治療法です。

特に、アレルギー性喘息や好酸球性喘息といった特定の喘息タイプに効果的で、これまでの治療で十分な効果が得られなかった患者に有効とされています。

関連記事:喘息の主な症状とは?症状が出やすい時や悪化させる要因を解説

喘息治療に使われる吸入薬の選び方

喘息治療で吸入薬を選ぶ際には、患者の症状や生活状況、デバイスの使いやすさを考慮し、最適なものを選択することが重要です。

以下に、吸入薬を選ぶ際に考慮すべきポイントを詳しく解説します。

喘息の重症度の評価

吸入薬の選択は、患者の喘息の重症度に応じて行います。

喘息の重症度は、症状の頻度や発作の程度、ピークフロー値(呼気流量)などを基に以下のように分類されます。

軽症間欠性症状の頻度週2回以下、夜間症状はほぼない
治療薬発作時のみ短時間作用性β-2刺激薬(SABA)を使用
軽症持続性症状の頻度週3回以上、夜間症状は月に2回以下
治療薬吸入ステロイド(ICS)を定期的に使用
中等症持続性症状の頻度毎日、夜間症状が週1回以上
治療薬ICS+長時間作用性β-2刺激薬(LABA)を併用
重症持続性症状の頻度症状が常にあり、夜間症状が頻繁に発生
治療薬高用量ICS+LABA+長時間作用性抗コリン薬(LAMA)など、複数薬剤の併用が必要

吸入デバイスの選び方

吸入薬は薬剤だけでなく、使用するデバイスも治療効果に影響します。

患者の吸気能力や操作性を考慮して適切なデバイスを選ぶことが重要です。

主なデバイスと特徴
定量噴霧式吸入器(pMDI)特徴ボタンを押すと薬剤が霧状に出る、吸気速度が弱い患者でも使用可能
適応小児、高齢者、吸う力が弱い患者
注意点吸入とボタンのタイミングを合わせる必要があり

ドライパウダー吸入器(DPI)
特徴薬剤が粉末状で、吸う力で気道に届ける
適応吸気速度が十分な成人患者
注意点吸う力が弱い場合、薬剤が十分に届かないことがある
ネブライザー特徴薬剤を霧状にして吸入する装置、長時間吸入でき、重症患者にも適する
適応乳幼児や高齢者、重症患者
注意点持ち運びが難しく、家庭や医療施設での使用が中心

デバイスの操作性と携帯性

喘息治療における吸入デバイスの操作性と携帯性は、治療効果を最大限に引き出すための重要な要素です。

操作性の面では、患者の年齢や吸気能力、生活環境に応じたデバイス選びが求められます。

例えば、吸気能力が低い小児や高齢者には、ボタン操作が簡単で吸入タイミングを合わせやすい定量噴霧式吸入器(pMDI)やソフトミスト吸入器(SMI)が適しており、吸気能力が十分な成人にはドライパウダー吸入器(DPI)のような簡便なデバイスが適します。

また、重症患者や吸入操作が苦手な人には、霧状の薬を長時間吸入できるネブライザーが有効です。

一方で、携帯性の観点からは、特に発作治療薬では軽量でコンパクトなpMDIやDPIが推奨され、緊急時の迅速な対応が可能になります。

患者の日常生活の負担を軽減するためにも、小型で堅牢なデバイスを選ぶことが重要です。

局所的副作用のリスクと対策

喘息治療で使用する吸入薬は、正しく使えば効果的に症状をコントロールできますが使い方によっては副作用が起きることがあります。

たとえば、吸入ステロイド(ICS)が口の中に残ると、口腔カンジダ症(口の中に白い斑点ができる病気)が発生することがあります。

また、薬が声帯に付着すると声がかすれることがあり、ドライパウダー吸入器(DPI)では喉の乾燥や刺激感を感じる場合があります。

こうした副作用を防ぐために、吸入後は必ず水でうがいをして口や喉に残った薬を洗い流すことが重要です。

スペーサーを使うと薬が口に残る量を減らせるので便利ですし、吸入方法をしっかり覚えることで薬が気道に届きやすくなります。

喘息治療のおすすめ長期管理吸入薬

フルタイド(Flutide)

種類吸入ステロイド(ICS)
吸入形状定量噴霧式吸入器(pMDI)またはドライパウダー吸入器(DPI)
特徴有効成分のフルチカゾンが、気道の炎症を直接抑え、喘息症状の予防が可能です。
長期使用で喘息のコントロールが向上し、発作の頻度と重症度を減少させます。
ドライパウダー吸入器(DPI)は吸気速度が十分な患者に適し、吸入操作が簡単です。

パルミコート(Pulmicort)

種類吸入ステロイド(ICS)
吸入形状ネブライザー用溶液またはDPI
特徴有効成分のブデソニドが、気道の慢性炎症を抑える効果を発揮します。
小児や高齢者に適しており、ネブライザーを使用して吸入することも可能です。
吸入後の刺激感が少ないのが特徴です。

シムビコート(Symbicort)

種類ICS+LABA(吸入ステロイド+長時間作用性β-2刺激薬の配合薬)
吸入形状DPI
特徴コンパクトなデバイスで携帯性に優れ、外出先でも使いやすい。

アドエア(Advair)

種類ICS+LABA(吸入ステロイド+長時間作用性β-2刺激薬の配合薬)
吸入形状DPIまたはpMDI
特徴吸気速度が十分な患者に適し、吸入操作が簡単です。

スピリーバ(Spiriva)

種類LAMA(長時間作用性抗コリン薬)
吸入形状DPIまたはソフトミスト吸入器(SMI)
特徴ミスト状で吸入しやすく、高齢者にも適しています。

関連記事:アレルギーが原因で起きる咳の特徴|効果のある薬や治し方を紹介

喘息治療のおすすめ発作治療吸入薬

喘息の発作治療には、急性症状を迅速に改善するための即効性吸入薬が使用されます。

以下では、発作治療におすすめの吸入薬のそれぞれの種類や吸入形状、特徴について解説します。

メプチンエアー(Meptin Air)

種類短時間作用性β-2刺激薬(SABA)
吸入形状定量噴霧式吸入器(pMDI)
特徴有効成分のプロカテロールが、気道を迅速に広げて呼吸を楽にします。
発作時に吸入することで、数分以内に効果が現れます。
コンパクトなデバイスで携帯しやすく、外出時にも便利です。
注意点頻繁に使用する場合は、喘息管理が不十分な可能性があるため医師に相談が必要です。

ベロテック(Berotec)

種類短時間作用性β-2刺激薬(SABA)
吸入形状定量噴霧式吸入器(pMDI)
特徴有効成分のサルブタモールが、気道を即座に広げ、呼吸困難を緩和します。
吸入後、速やかに効果を発揮するため、急性発作時に最適です。
操作が簡単で、緊急時でも使いやすいデバイスです。
注意点短時間で効果が切れるため、長期管理には適しません。

アトロベント(Atrovent)

種類短時間作用性副交感神経遮断薬(SAMA)
吸入形状定量噴霧式吸入器(pMDI)
特徴有効成分のイプラトロピウムが、副交感神経を抑え、気道を拡張します。
発作時にSABAと併用することで、相乗効果が得られます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療にも用いられる薬剤です。
注意点SABAと併用することで効果が高まりますが、単独使用では効果が遅い場合があります。

コンビベント(Combivent)

種類SABA+SAMA(短時間作用性β-2刺激薬+短時間作用性副交感神経遮断薬の配合薬)
吸入形状定量噴霧式吸入器(pMDI)
特徴サルブタモール(SABA)とイプラトロピウム(SAMA)を配合した薬剤で、気道を迅速かつ効果的に広げます。
単剤では効果が不十分な場合に有効です。
発作時の緊急治療に優れた効果を発揮します。
注意点頻繁に使用すると副作用が出る場合があるため、適切な使用回数を守る必要があります。

サルタノール(Ventolin)

種類短時間作用性β-2刺激薬(SABA)
吸入形状定量噴霧式吸入器(pMDI)
特徴有効成分のサルブタモールが気道を迅速に広げ、数分で呼吸困難を改善します。
使用頻度が高く、世界的に広く使われている薬剤です。
携帯性に優れ、外出時の急な発作にも対応可能です。
注意点定期的な使用ではなく、必要時のみの使用が推奨されます。

千葉内科・在宅クリニックでできること

千葉内科・在宅クリニックでは、丁寧な問診・診察を通じて患者様の症状やニーズを詳しく把握し、お一人おひとりに最適な治療をご提案いたします。

また、症状に合わせて適切な処方を選択し、必要に応じて薬の副作用や効果についても詳しくご説明いたします。

万が一、緊急性がある場合や高度な治療が必要な際には、専門病院への迅速な紹介も行っております。

安心してご相談いただける体制を整えていますので、お気軽にご来院ください。

まとめ

喘息治療において、吸入薬は症状の管理や発作予防に欠かせない重要な治療法です。

本記事では、吸入薬の種類や使い方、飲み薬や貼り薬、注射薬の役割について詳しく解説しました。

また、正しいデバイスの選び方や局所的副作用の予防策も治療を成功させるために重要なポイントです。

千葉内科・在宅クリニックでは、患者さま一人ひとりに合わせた最適な治療を提案し、吸入薬の使用指導や在宅医療の提供など、安心して治療を続けられる環境を整えています。

医師やスタッフと連携しながら適切な治療を受けることで、喘息症状の安定化を目指しましょう。

疑問や不安がある場合は、ぜひ当クリニックにご相談ください。

喘息と向き合いながら、より快適な生活を実現していきましょう。

この記事の監修医師


千葉内科・在宅クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)

経歴

  • 三重大学医学部医学科 卒業
  • 四日市羽津医療センター
  • 西春内科・在宅クリニック
  • 千葉内科・在宅クリニック院長

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