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コロナ後遺症による倦怠感の特徴は?受診の目安や対処法について解説
新型コロナウイルス(COVID-19)感染後、多くの方が経験する「コロナ後遺症(Long-Covid)」。
中でも「倦怠感」は、日常生活に大きな影響を与える厄介な症状です。
この記事では、コロナ後遺症による倦怠感の特徴や他の症状との関連、受診の目安や自分でできる対処法、治療方法について詳しく解説します。
コロナ後遺症に悩む方やその対策を知りたい方に役立つ情報をお届けします。
Contents
コロナ後遺症による倦怠感の特徴
長期間にわたる疲労感
コロナ後遺症で最も多い症状は、慢性的な倦怠感や疲労感です。
コロナ後遺症の場合、数週間から数か月、時には1年以上も続くことがあります。
この長期にわたる疲労感は、日常生活に大きな支障をきたします。
通常の疲労と異なる持続的な倦怠感
一般的な疲労とは異なり、休息を取っても改善しないことが特徴です。
十分な睡眠を取ったにもかかわらず、朝起きた時から強い疲労感を感じるという症状が報告されています。
集中力や記憶力の低下
コロナ後遺症による倦怠感は、身体的な疲労だけでなく、精神的な疲労も引き起こします。
これを「ブレインフォグ」と呼び、集中力や記憶力、思考力が低下し、考えがまとまらなくなります。
活動後の疲労の悪化
軽い運動や日常生活動作を行った後に、倦怠感が悪化するケースもあります。
これを「運動後疲労増悪(PEM: Post-Exertional Malaise)」と言い、軽い活動でも症状が悪化するため、日常生活に大きく支障をきたします。
例えば、軽い運動や家事をした後に、数日間強い疲労感が続く症状です。
生活の質への影響
長期にわたる倦怠感は、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。
仕事や学業のパフォーマンス低下、社会活動の減少、家族や友人との関係の変化などに影響が出ることが多いです。
さらに、長期的な倦怠感は精神的な影響を与え、不安やうつ症状を引き起こすこともあります。
関連記事:睡眠障害はコロナ後遺症?症状はいつまで続く?対処法や治療について
コロナ後遺症のその他症状
倦怠感以外にも、コロナ後遺症ではさまざまな症状が報告されています。
主な症状について見ていきましょう。
味覚・嗅覚障害
新型コロナウイルス感染により、味覚や嗅覚が一時的に失われることがあります。
通常、感染が治癒するとこれらの感覚も回復しますが、コロナ後遺症として長期的に持続する場合もあるので注意が必要です。
特に、食べ物の味が感じられない、特定の匂いが全くわからないといった症状が続くことが報告されています。
発熱
コロナ後遺症では、慢性的な微熱が続くことがあります。
このような発熱は感染が治まった後も数週間から数か月続き、原因不明の熱感に悩まされる患者さんもいます。
咳
感染から回復した後も、咳が長引くことがあります。
特に、夜間や運動後に咳が出やすく、気道が過敏になっていることが原因と考えられます。
このような咳は、呼吸困難感や胸の不快感・圧迫感を伴うことが特徴です。
息苦しさ
肺や心臓に関する後遺症として、息苦しさや呼吸困難を訴える患者さんが多くいます。
具体的には、以下のような症状が含まれます。
- 軽度の動作で息切れ
- 呼吸が浅くなる感覚
薬物療法だけでなく、呼吸を楽にするためのリハビリや運動療法が必要です。
抜け毛
意外にも、コロナ後遺症の一つとして抜け毛が報告されています。
感染後に体が大きなストレスを受けることで、髪の成長サイクルが乱れ、一時的に大量の抜け毛が起こることがあります。
通常、数か月で収まりますが、精神的な負担を感じる患者さんも多いです。
その他の症状
他にも以下のような症状が見られます。
- 筋肉痛・関節痛
身体全体の筋肉痛や関節のこわばりが続く - 頭痛
しつこい頭痛が続き、日常生活に支障をきたす - 睡眠障害
眠りが浅くなったり、夜間に頻繁に目覚めたりする - 心臓の異常
動悸や不整脈が見られ、特に運動時やストレスがかかると症状が悪化する - 精神的症状
うつ症状や不安感、集中力の低下、意欲喪失など、精神面の問題も報告されている
倦怠感が続きコロナ後遺症を疑う場合は受診が必要?
コロナ後遺症による倦怠感が続く場合、医療機関を受診することをお勧めします。
以下のような場合は、特に受診を検討しましょう。
- 倦怠感が3か月以上続いている
- 日常生活に支障をきたすほど強い倦怠感がある
- 睡眠や休息で回復しない疲労感が数週間以上続く
- 倦怠感に加えて、息切れ、胸痛、動悸など他の症状がある
- 倦怠感が徐々に悪化している
- 集中力の低下、気分の落ち込みのような精神的な症状がある
医療機関では、血液検査や画像診断を行い、他の疾患を除外しながら適切な治療方針を立てることができます。
また、早めの受診により、症状が重症化する前に適切なケアを受けることができるため、安心して相談してください。
関連記事:コロナ後遺症の喉の痛みが治らない!喉の違和感はいつまで続く?
コロナ後遺症による倦怠感の自分でできる対処法
コロナ後遺症による倦怠感は、医師の指導のもとで治療することが重要ですが、自分でできる対処法もあります。
以下に、自宅で実践できる倦怠感の対処法を紹介します。
適度な休息とペーシング
過度な安静は筋力低下を招く可能性があるため、適度な活動と休息のバランスを取ることが大切です。
「ペーシング」と呼ばれる方法で、一日の活動量を均等に分散させ、オーバーワークを避ける方法です。
- 体調に合わせて活動を調整する
エネルギーを温存し、無理のない範囲で行動します。 - 体調が良いときでも休息をとる
調子が良くても、活動を詰め込みすぎず、適度に休むことが重要です。 - 活動と休息をバランスよく行う
エネルギーを使い果たさないよう、適度に休息を入れながら過ごしましょう。
睡眠の質を向上させる
良質な睡眠をとることは、体の回復にとても重要です。
良質な睡眠とは、深い眠りと十分な睡眠時間があり、朝すっきりと目覚められる状態のことです。
以下のポイントを守ることで、睡眠の質を高めることが出来ます。
- 規則正しい睡眠習慣を維持する
毎日同じ時間に寝起きし、体内時計が整えましょう。 - 就寝前のリラクゼーション
読書や深呼吸など、心身をリラックスさせる習慣を取り入れましょう。 - スマートフォンの光を避ける
スマートフォンやパソコンの光は、睡眠を妨げることがあるため、就寝前は避けましょう。 - カフェインやアルコールを控える
寝る前に摂取すると、眠りが浅くなることがあります。
栄養バランスの良い食事
免疫力の回復や体力の維持には、栄養バランスの取れた食事が不可欠です。
ビタミンB群や鉄分、ミネラル、たんぱく質を十分に摂取することで、倦怠感の改善が期待できます。
軽い運動やストレッチ
倦怠感が続く場合、激しい運動は避け、体調に応じて軽いストレッチや、ゆっくりとしたウォーキングを取り入れることが効果的です。
血行を促進し、筋肉の緊張を和らげることで、疲労感を軽減できます。
ただし、無理をせず、体調に応じて行うことが大切です。
ストレス管理
ストレスが倦怠感を悪化させることがあります。
深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を取り入れて、ストレスを軽減することが症状の改善に役立ちます。
また、家族や友人とのコミュニケーション、医師やカウンセラーとの相談も、精神的なサポートとして効果的です。
水分補給
脱水は疲労感を悪化させるため、十分な水分補給を心がけましょう。
特に倦怠感が強い時は、こまめに水を飲むことで体調を整えることができます。
コロナ後遺症による倦怠感の治療方法
医療機関で行われる治療としては、主に以下が挙げられます。
薬物療法
コロナ後遺症による倦怠感に対する薬物療法は、症状の種類や程度に応じて異なります。
症状を緩和するために、以下の薬剤が用いられることが多いです。
ビタミン剤やミネラル補充
倦怠感の軽減のために、ビタミンB群や鉄分のサプリメントを処方されることがあります。
特に、栄養不足が確認された場合、これらの補充は特に重要です。
抗炎症薬
体内の炎症が倦怠感に関係している場合、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やステロイドが使用されますが、長期間の使用には注意が必要です。
必ず医師の診察を受け、用法用量を守ることが大切です。
漢方薬
漢方薬は、コロナ後遺症による倦怠感にも効果が期待できるものが多くあります。
以下の漢方薬がよく用いられます。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
免疫力を高め、慢性的な疲労や倦怠感を改善する効果があります。
特に、体力が低下しているときや疲労が溜まっている場合に有効です。
エネルギーを補い、虚弱体質の改善にも役立ちます。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
全身の疲労感や虚弱体質の改善に使用される漢方薬です。
病後の体力回復や免疫力強化が期待でき、長期間続く倦怠感にも効果があります。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
疲れやすく体力が落ちていると感じる人に用いられます。
体のエネルギーや血を補い、疲労感や倦怠感の改善が期待できます。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
精神的な不安や緊張、疲労感の緩和し、睡眠の質を改善してくれます。
他にも様々な漢方薬があり、患者さん一人一人の症状に合わせて医師が適切な処方を行います。
リハビリ
倦怠感を改善するためには、適切なリハビリが重要で、患者さんの体力や活動レベルに合わせて調整して行います。
運動療法
初めは軽いストレッチや呼吸法から始め、少しずつ活動量を増やしていきます。
無理のない範囲で行うことが重要で、特に「運動後疲労増悪(PEM)」が見られる場合は、ペーシングを意識した運動療法が推奨されます。
呼吸リハビリ
息苦しさや呼吸困難を伴う場合、呼吸筋の強化や深呼吸のトレーニングを行います。
これにより、酸素供給の改善と体全体のエネルギー効率が向上します。
精神的サポート
コロナ後遺症による倦怠感は精神的影響が大きいです。
長引く疲労や不安感、抑うつ状態に対して、以下の精神的サポートが有効とされています。
カウンセリングや心理療法
以下の方法で、倦怠感や精神的ストレスを軽減し、日常生活への適応を助けます。
- 認知行動療法(CBT)やカウンセリングを通じたサポート
- 倦怠感や精神的ストレスの管理をサポート
- 患者さんが自身の症状に対して受け入れる過程を支援
マインドフルネスや瞑想
マインドフルネスは、今やっていることに意識を集中させることです。
例えば、朝コーヒーを飲むときに周囲の音やコーヒーの香りや温度、味だけを意識します。
瞑想は、体をリラックスさせ、心の状態と向き合いながら心を落ち着かせる方法です。
今この瞬間に意識を向けることでストレスを減らし、倦怠感を和らげる効果が期待できます。
代替医療
西洋医学に加えて、以下の代替医療もコロナ後遺症の倦怠感に対して一定の効果があるとされています。
- 鍼灸
体内のエネルギーのバランスを整え、倦怠感や慢性的な疲労を和らげます。
- アロマセラピー
アロマオイルを使用したマッサージや香りを楽しむ芳香療法は、心身をリラックスさせ、疲労感を和らげます。
- ハーブ療法
アシュワガンダやエゾウコギといったハーブには、倦怠感や慢性疲労に対して補助的な効果があるとされています。
コロナ後遺症による倦怠感に効果のある市販薬は?
コロナ後遺症による倦怠感には、市販薬や漢方薬が利用されることがあります。
これらはあくまで症状緩和が目的なので、使用する際は医師や薬剤師に相談し、長期の使用を避けることが大切です。
エゾウコギ(ウコギ科)やアダプトゲン系サプリメント
市販のサプリメントでは、「エゾウコギ」などのアダプトゲン系のハーブが有効です。
これらのハーブは、体のストレス耐性を高めることで、倦怠感や疲労感を軽減する効果が期待されます。
特にエゾウコギは、疲労回復や免疫力の向上に役立ちます。
ビタミンB群サプリメント
倦怠感や疲労感を感じる場合、ビタミンB群の補充が有効です。
特に、ビタミンB1(チアミン)やビタミンB12は、エネルギー代謝をサポートし、疲労感の軽減に役立ちます。
栄養ドリンク(医薬部外品・ドリンク剤)
市販の栄養ドリンクには、アミノ酸やビタミン類が含まれ、疲労回復が期待できます。
例えば、タウリンやアルギニンが配合されたドリンク剤は、エネルギー代謝を高める働きがあり、一時的に疲労を軽減してくれます。
漢方薬
先述した漢方薬は薬局でも購入できます。
漢方薬の効果を最大限に引き出すためには、服用するタイミングも重要です。
例えば、空腹時に服用すると吸収が良い場合もあります。
体質や症状に合わせて選ぶことが重要なので、服用前には医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
コロナ後遺症の倦怠感はいつまで続く?
コロナ後遺症の倦怠感の持続期間は個人差が大きく、一概に言えません。
多くの方は数か月で改善しますが、中には1年以上症状が続く方もいます。
米国疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、感染者の約13.3%が3か月以上症状が続くとされています。
完全に症状が消失するまでの期間は個人によって異なりますが、適切な自己管理と必要に応じた医療サポートを受け、症状の改善を促進を目指しましょう。
関連記事:動悸や息切れが治らない|原因はコロナの後遺症?ストレス?対処方法について解説
千葉内科・在宅クリニックでできること
当院ではコロナ後遺症に特化した「コロナ後遺症外来」を設け、後遺症に苦しむ患者さんに対する専門的な診療を行っています。
医師が個々の症状に対して適切な診断を行い、必要な治療やリハビリ、心のケアを提供します。
必要に応じて血液検査や画像診断、肺機能検査などを行い、症状の原因を探ります。
当院で行えない検査については、専門機関に紹介状を作成することも可能です。
倦怠感、息苦しさ、味覚や嗅覚の障害、抜け毛などのコロナ後遺症にお悩みの方は、ぜひ当院のコロナ後遺症外来にご相談ください。
まとめ
コロナ後遺症の倦怠感は、単なる疲労とは異なり、長期間にわたり生活の質を低下させる可能性があります。
また、コロナ後遺症には、風邪やインフルエンザ、その他の感染症や熱中症などと類似した症状が多く含まれます。
そのため、自己判断で「これはコロナ後遺症だ」と決めつけず、不調が続く場合は必ず医師に相談しましょう。
医療機関での治療と日常生活での対策を組み合わせることで、症状を軽減できます。
自分の体調に合った対策を行い、健康な生活を取り戻しましょう。
参考文献
新型コロナ後遺症:倦怠感について | 重要なお知らせ | 中東遠総合医療センター
急性期COVID-19後の患者の持続症状 | 集中治療医学 | JAMA | JAMAネットワーク
プライマリケアにおけるCOVID-19の急性期後管理 | The BMJ
リハビリテーション支援:COVID-19関連疾患後の自己管理、第2版
千葉内科・在宅クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)
経歴
- 三重大学医学部医学科 卒業
- 四日市羽津医療センター
- 西春内科・在宅クリニック
- 千葉内科・在宅クリニック院長