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末期がんによく見られる症状とは?急に悪化するのは死の兆候?
末期がんの患者様が最後の数か月(2~3ヶ月)の間に経験する可能性がある症状は多岐にわたります。
がんの種類、がんが体のどの部分に影響を及ぼしているか、および患者様の全体的な健康状態によって異なります。
今回は、末期がんによくみられる症状や、症状の経過、がんの種類による違いなどについて詳しく解説していきます。
Contents
末期がんによくみられる症状
末期がんの患者様が最後の2~3ヶ月の間に経験する可能性がある症状は多岐にわたります。
これらの症状は、がんの種類、がんが体のどの部分に影響を及ぼしているか、および患者様の全体的な健康状態によって異なります。
以下に、一般的な経過として見られる症状を時系列に沿って説明します。
なお、この説明は一般的な傾向に基づいており、個々の患者様の状況によって異なることをご理解ください。
末期がんの一般的な症状の経過
初期段階(約2~3ヶ月前)
- 疲労感
極度の疲労や体力の低下が見られます。
少しの活動(立ったり、歩いたり)でも疲れやすくなります。 - 食欲不振
食べることに対する興味が減少し、徐々に体重が減り、痩せていきます。 - 痛み
がんの進行によって新たな痛みが現れるか、現在の痛みがさらに悪化することがあります。 - 呼吸困難
肺や周囲の組織にがんが広がっている場合、呼吸困難の症状が出現し呼吸がしにくくなることがあります。
中期段階(約1~2ヶ月前)
- 意識の変化
寝ている時間が長くなったり、意識が朦朧とする時間が増えたりします。 - 浮腫の増悪
足や腹部に浮腫ができ始め、体動困難や不快感を引き起こすことがあります。 - 皮膚の変化
黄疸や皮膚の色素沈着など、皮膚に変化が見られることがあります。
末期段階(最後の数週間)
- 意識レベルの低下
患者様は大半の時間を眠って過ごし、起きている時も反応が鈍くなります。
摂食・摂水の困難: 飲み込む力が弱まり、食事や水分の摂取が困難になります。 - 呼吸パターンの変化
呼吸が徐々に不規則になり、無呼吸の時間が伸びたり、「チェーンストークス呼吸」と呼ばれる呼吸パターンが見られることがあります。
診断されてからの平均余命は?
末期がん(治療不可能ながん)の患者様の平均余命は、がんの種類、がんの進行度、患者さんの一般的な健康状態、利用可能な治療法や緩和ケアの対応など、多くの要因によって大きく異なります。
そのため、一概に「すべての末期がん患者の平均余命はこれだ」と示すことは困難です。
関連記事:悪性腫瘍ってなに?がんも含まれる?それぞれの症状や種類、特徴について
がんの種類による違い
各種がんにおける進行段階や治療の応答性には大きな差があり、それによって余命も大きく異なります。
例えば、進行した肺がんや膵臓がんの患者様は、比較的短い平均余命を示すことが多いです。
一方で、乳がんや前立腺がんのように、比較的治療の選択肢が多く、ある程度の期間、病状の管理が可能な場合もあります。
以下に末期がんと診断された場合の癌の種類それぞれの平均的な余命を記載します。(個人差があります。)
- 進行性非小細胞肺がん
余命は数ヶ月から1年未満の場合が多いです。 - 膵臓がん
末期の場合、平均余命は数ヶ月とされます。 - 進行性肝臓がん
余命は数ヶ月から1年程度です。 - 進行性膠芽腫(脳腫瘍)
数ヶ月から1年程度の余命となることが一般的です。
緩和ケアの役割
末期がん患者様にとって、緩和ケアは症状の管理と生活の質の向上を目的として重要です。
緩和ケアが適切に提供されることで、痛みや呼吸苦などの他の症状が軽減され、患者様とその家族の精神的なサポートが行われます。
これにより、患者様の余命が延長する可能性もありますが、主に生活の質(QOL=Quality of life)の改善に焦点を当てています。
末期がんと診断されたら?
末期がんと診断された際には、患者様とその家族は多くの選択肢を検討・考慮する必要があります。
治療の目標は、生存期間の延長、症状の緩和、生活の質の向上など、患者様の希望や状態に応じて異なります。
以下に、主な選択肢とその概要を説明します。
諦めず治療を継続する
末期がんであっても、先進的な治療を選択することは可能です。
これには、がんの進行を遅らせるための化学療法、放射線療法、標的療法、免疫療法などが含まれます。
治療を継続する目的は、可能な限り生存期間を延長することや、症状を管理して生活の質を維持することにあります。
しかし、これらの治療は様々な副作用が伴うことが多く、治療の利益とリスク(メリットとデメリット)を慎重に検討する必要があります。
緩和ケアへ移行する
緩和ケアは、末期がん患者様の痛みや他の症状を管理し、患者様とその家族に精神的、社会的サポートを提供することに焦点を当てたアプローチです。
緩和ケアの目的は、治療による延命ではなく、患者様の生活の質を最大限に向上させることにあります。
緩和ケアは、病院、緩和ケア専門施設、または在宅で受けることができます。
緩和ケアチームは、痛みや不快感の管理、心理社会的な支援、終末期の計画など、患者様とそのご家族様の包括的なニーズに対応します。
ホスピスケアを受ける
ホスピスケアは、余命が限られている患者様に対して、緩和ケアの原則に基づいたサポートを提供するサービスです。
ホスピスケアは、治療の目的が延命ではなく、患者様の残された時間をできるだけ快適に過ごすことに重点を置いています。
ホスピスケアは、病院のホスピス病棟、ホスピス専門施設、または患者様の自宅で提供されることが多く、痛みや不快な症状の管理、心理的・精神的な支援、家族へのケアなどを含みます。
また、ホスピスケアチームには、医師、看護師、社会福祉士、精神的支援を提供する専門家など、多職種のスタッフがいます。
これらの選択肢は相互に排他的ではなく、病状の進行に応じて、治療方針を調整することが可能です。
例えば、先進治療を試みた後に、緩和ケアやホスピスケアに移行することも一般的です。
重要なのは、医療従事者が十分な情報とサポートを提供し、患者様とその家族が患者様の価値観や希望に最も合致した選択を行えるようにすることです。
関連記事:肺がんの気をつけてほしい初期症状や原因、ステージ(進行度)について
末期がんと診断されても生還するケースもある
末期がんと診断された患者様が完治したり、長期生存するケースは非常にまれですが、例外的なケースは存在します。
これらのケースはしばしば「奇跡的な回復」と呼ばれ、医学界では詳細な研究の対象となっています。
完治や長期生存が報告されるケースは、特定のがんの種類、個人の免疫反応、新たな治療法(治験)の奏功、または他の未解明の因子によるものかもしれません。
エビデンスと説明
免疫療法と長期生存者
最近の研究で、特定の免疫療法が末期がん患者において長期生存をもたらす可能性があることが示されています。
例えば、メラノーマ(皮膚がん)患者を対象とした免疫チェックポイント阻害剤の使用は、一部の患者において長期的な利益をもたらしました。
参考文献
Schadendorf D, Hodi FS, Robert C, et al. Pooled Analysis of Long-Term Survival Data From Phase II and Phase III Trials of Ipilimumab in Unresectable or Metastatic Melanoma. J Clin Oncol. 2015;33(17):1889-94.
高度個別化治療
遺伝子プロファイリングを利用した高度に個別化された治療戦略が、特定の末期がん患者において驚くべき反応を示した事例が報告されています。
これらのアプローチは、がんの遺伝的特徴に基づいて最適な治療法を選択することを可能にします。
参考文献
Le Tourneau C, Delord JP, Gonçalves A, et al. Molecularly targeted therapy based on tumour molecular profiling versus conventional therapy for advanced cancer (SHIVA): a multicentre, open-label, proof-of-concept, randomised, controlled phase 2 trial. Lancet Oncol. 2015;16(13):1324-34.
上記なような例外的な症例もありますが、末期がんと診断された多くの患者様は、病気が治ることはなく、治療の主な目的は症状の緩和と生活の質の向上になります。
しかし、新しい治療法の開発と臨床試験により、末期がん患者様の治療選択肢は増加しており、一部の患者様にとっては長期生存の可能性が向上しています。
これらの例外的なケースは希望を提供しますが、全ての患者様に当てはまるわけではないため、治療計画は個々の患者様の状況に応じて慎重に検討する必要があります。
関連記事:胃がんの症状は胃炎や胃潰瘍と似ている?【早めの検診を】
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まとめ
今回は、末期がんによくみられる症状や、症状の経過、がんの種類による違いなどについて解説しました。
いかがでしたでしょうか?
近年では医学が進みがんを患い、克服してがんになる前と同じように生活ができる方も多くなりました。
しかし、まだまだがんを患い亡くなってしまうことも多くあります。
がんを患ってしまった方が最後まで自分らしく生活を送れるように緩和ケアやホスピスなどがあります。
治療し続けることも重要ですが、治療で様々な副作用が現れるため、治療を続けるメリットやデメリット、緩和ケアやホスピスへ移行することなども患者様ご本人様や、ご家族様も含めしっかりと話し合いを行っていくことが大切になります。
がんの治療や、末期がんの最期の過ごし方など、何かお困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。
千葉内科・在宅クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)
経歴
- 三重大学医学部医学科 卒業
- 四日市羽津医療センター
- 西春内科・在宅クリニック
- 千葉内科・在宅クリニック院長