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終末期の在宅ケアで家族ができること|大切な人と穏やかな時間を過ごすためのポイント
「自宅で最期を迎えさせてあげたい」と決意したものの、日に日に変化していくご家族の様子を前にして、「自分には何ができるのだろう」と不安を感じていらっしゃる方は少なくありません。
厚生労働省の調査によると、約7割の方が最期を自宅で迎えたいと望んでいる一方、実際に自宅で亡くなる方は約2割にとどまっています。
その背景には、「自宅で看取ることへの不安」や「何をしてあげたらよいかわからない」というご家族の戸惑いがあります。
本記事では、終末期の在宅ケアで家族ができることを具体的にご紹介します。
医療従事者ではないご家族だからこそできるケアを知り、ご本人とご家族の双方が悔いのない穏やかな時間を過ごすためのヒントとしてお役立てください。
Contents
終末期の在宅ケアで家族ができること【心の寄り添い】
終末期のケアにおいて、医療的な処置は医師や訪問看護師が担います。
一方、ご家族にしかできない最も大切な役割は「心に寄り添う」ことです。
全国在宅医療マネジメント協会のガイダンスでも、看取りが近づいた時期でも
「本人らしい活動を一緒にする」
「意思疎通ができる間にたくさん話し伝えたいことを伝える」
ことの大切さが強調されています。
そばにいる時間を大切にする
終末期の方にとって、家族がそばにいてくれるだけで大きな安心感につながります。
特別なことを話す必要はありません。
同じ部屋で過ごす、手を握る、そっと背中をさするといったシンプルな行動が、ご本人の心を穏やかにします。
緩和ケアの専門家は、「一人で死に臨むような孤独を感じさせないことが、家族や友人の最も大切な役割」と指摘しています。
ただし、ご本人が一人の時間を望む場合もありますので、様子を見ながら適度な距離感を保つことも大切です。
日常の出来事を共有する
「今日は天気がよかったよ」「○○ちゃんが元気にしていたよ」など、日常のちょっとした出来事を伝えてみましょう。
療養生活が長くなると、外の世界とのつながりが薄くなりがちです。
家族が外の空気を届けることで、ご本人に「自分はまだ日常の中にいるんだ」という安心感を持っていただけます。
反応が薄くなっている場合でも、耳は最後まで機能していると言われています。
話しかけること自体がご本人への大切なケアになりますので、遠慮せずに語りかけてください。
感謝や思い出を伝え合う
「ありがとう」「あのとき楽しかったね」といった言葉は、ご本人にとっても、ご家族にとっても、かけがえのない心の贈り物になります。
思い出のアルバムを一緒に見たり、懐かしいエピソードを語り合ったりする時間は、ご本人に「自分の人生は意味のあるものだった」と感じていただくきっかけになります。
伝えたいことがあるのに伝えられないまま別れを迎えると、ご家族の中に後悔が残ることがあります。今のうちに「言葉にして伝える」ことを、ぜひ意識してみてください。
好きな音楽や映像をともに楽しむ
ご本人が好きだった音楽をかけたり、思い出の映像や写真を一緒に見たりすることは、心の安らぎにつながります。
音楽には気持ちをリラックスさせる効果があり、言葉でのコミュニケーションが難しくなった段階でも、穏やかな空間をつくることに役立ちます。
お好みの音楽がわからない場合は、若い頃に流行していた曲や、家族で過ごした思い出に結びつく楽曲を選んでみるとよいでしょう。
ご本人の表情や仕草に変化があれば、それは心が反応しているサインかもしれません。
傾聴と共感を心がける
終末期を迎えた方は、死への不安や恐怖、これまでの人生を振り返るさまざまな感情を抱えていることがあります。
そんなとき、ご家族がただ耳を傾け、「つらいね」「そう感じるのは当然だよ」と共感の言葉をかけることは、何よりの支えになります。
無理にアドバイスをしたり、「頑張って」と励ましたりする必要はありません。
つらさを受け止め、一緒に感じる姿勢こそが、ご本人の孤独感を和らげます。
ご本人が言葉を発しなくても、隣にいて同じ空間で時間を過ごすだけで十分なケアになります。
関連記事:緩和ケアとホスピスの違いとは?
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終末期の在宅ケアで家族ができること【環境・生活のサポート】
心の寄り添いと並んで大切なのが、ご本人が少しでも快適に過ごせるよう環境や生活面を整えることです。
スキンシップで安心感を届ける
手を握る、額に触れる、肩をやさしくさするといったスキンシップは、言葉以上に安心感を届けることができます。
人の肌のぬくもりは、不安や痛みを和らげる効果があるといわれています。
マッサージやハンドケアなど、ご本人が心地よいと感じるスキンシップを取り入れてみましょう。
ただし、痛みのある部位や、触れられることを嫌がる場合は無理をせず、ご本人の反応を見ながら行うことが大切です。
保湿クリームを使ったハンドケアなどは、ケアと触れ合いを兼ねた方法としておすすめです。
心地よい環境づくり
ご自宅だからこそできる環境づくりは、在宅ケアの大きなメリットです。
ベッドまわりにお気に入りの写真や思い出の品を飾ったり、好きな香りのアロマを焚いたり、窓を開けて風を通したりするなど、五感に働きかける工夫が効果的です。
また、室温や湿度の調整、照明の明るさ、音の大きさなど、細やかな心地よい空間づくりは、ご本人にとって、気持ちの安定にもつながります。
ご本人の好みや体調に合わせて、こまめに調整してあげてください。
食事・水分への細やかな配慮
終末期になると食欲が落ちることは自然な経過の一つです。
「しっかり食べさせなければ」と焦る必要はありません。
ご本人が食べたいと思ったときに、食べたいものを、食べられる量だけ召し上がっていただくことが大切です。
飲み込みが難しくなってきた場合は、スプーンで少量ずつ口に運んだり、氷やガーゼで唇を湿らせたりする方法もあります。
お気に入りの飲み物を少量口に含むだけでも、ご本人にとっては大きな喜びになることがあります。
具体的な対応方法は、訪問看護師や主治医に相談しましょう。
表情やしぐさから気持ちを読み取る
終末期が進むと、言葉で意思を伝えることが難しくなる場合があります。
そのようなときこそ、表情の変化、手の動き、呼吸のリズムなど、言葉以外のサインに注意を向けてみてください。
眉間にしわが寄っていれば痛みや不快感のサインかもしれません。
手を握り返す力が弱くなっても、わずかな反応はご本人からのメッセージです。
長年一緒に過ごしてきたご家族だからこそ気づけるこれらの変化を、医療チームに伝えることも大切な役割です。
終活のお手伝い
ご本人が気がかりに感じていることを一つひとつ解消していくことは、穏やかな最期を迎えるために大切なサポートです。
たとえば、会いたい人に会う手配をする、大切な書類の整理を手伝う、遺言やメッセージの作成をサポートするなど、ご本人の希望に沿って手助けをしましょう。
経済面の不安については、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなどの専門家に相談することもできます。
ご本人が「やり残したことがない」と思えるよう、できる限りの協力をすることが、ご家族にできる大切な役割の一つです。
ACP(人生会議)で本人の意思を共有する
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは、今後の医療やケアについて、ご本人を主体に、ご家族や医療・ケアチームが繰り返し話し合うプロセスのことです。
厚生労働省は2018年にこの取り組みの愛称を「人生会議」と定め、普及に努めています。
「どのような最期を迎えたいか」「どこまでの治療を望むか」「大切にしたい価値観は何か」といったことを、元気なうちからご家族で話し合っておくことが推奨されています。
一度決めたら終わりではなく、体調や気持ちの変化に応じて何度でも話し合い直すことが大切です。
ご本人が意思を伝えられなくなったとき、ご家族がその思いを代弁できるようにしておくことは、ご本人の尊厳を守ることにもつながります。
難しい話題ですが、「もしものとき」に備えておくことで、いざというときにご家族の迷いや後悔を減らすことができます。
関連記事:訪問診療とは?診療の内容や受診すべき人の特徴などについて解説
終末期を支えるご家族自身の休息
在宅で大切な方を支えているご家族は、身体的にも精神的にも大きな負担を抱えています。
「自分が休んでいる場合ではない」と感じる方も多いかもしれませんが、ご家族が倒れてしまっては、ご本人を支えることができなくなります。
ご自身のケアも「ご本人のため」であることを忘れないでください。
介護疲れを放置しないことの大切さ
訪問看護の現場では、ご家族が付き添いに専念するあまり自身の通院が途絶え、健康を損なってしまうケースも報告されています。
終末期の在宅ケアは24時間気が抜けない状況が続くため、睡眠不足や慢性的な疲労が蓄積しやすくなります。
「少し疲れたかな」と感じた段階で早めに休息を取ることが重要です。
介護を一人で抱え込まず、ほかのご家族や訪問看護師、ケアマネジャーなど、周囲のサポートを積極的に活用しましょう。
レスパイトケアの活用
レスパイトケアとは、介護にあたるご家族が一時的に介護から離れ、休息を取るための支援サービスのことです。
「レスパイト(respite)」は英語で「休息」「小休止」を意味します。
代表的なサービスとして、日帰りで施設に通うデイサービスや、短期間施設に宿泊するショートステイがあります。
また、医療依存度の高い方の場合は、医療保険を利用したレスパイト入院という制度もあります。
「自分が楽をするために利用するのは申し訳ない」と感じる方もいらっしゃいますが、ご家族がリフレッシュすることは、結果的により質の高い介護を続けることにつながります。
担当のケアマネジャーに相談し、利用できるサービスを確認してみてください。
専門職やまわりの人への相談
在宅ケアでは、主治医、訪問看護師、ケアマネジャー、ソーシャルワーカーなど、多くの専門職がチームとなってご本人とご家族を支えます。
体調の変化への対応はもちろん、「これでよいのだろうか」という不安や迷いについても、遠慮なく相談してください。
また、同じ経験をした方の話を聞いたり、家族会や相談窓口を利用したりすることで、気持ちが楽になることもあります。
つらいときに弱さを見せることは、決して恥ずかしいことではありません。
周囲の力を借りながら、ご自身の心と身体もいたわってあげてください。
関連記事:訪問診療の料金の目安について|対応可能な疾患や適切な頻度について
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千葉内科在宅・美容皮膚科クリニックでできること
千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック(千葉市稲毛区)では、患者様とご家族に寄り添った在宅診療を提供しております。
医師・看護師・医療事務がチームとなって24時間365日の診療体制で、終末期を自宅で過ごしたいという方を支えています。
定期的な訪問診療はもちろん、急な体調変化にも対応可能です。
がんの痛みを和らげる緩和ケアや、日常的な健康管理など、幅広い医療ニーズに対応いたします。
在宅での看取りを希望されるご家族に対しては、終末期に起こりうる身体の変化や、その際の対応方法について、事前にていねいにご説明いたします。
また、ご家族の精神的なサポートも重視しており、不安やお悩みにいつでもご相談いただける体制を整えています。
訪問エリアはクリニックから約8km圏内。在宅診療に関するご相談は、お電話やお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
まとめ
終末期の在宅ケアにおいて、ご家族の存在はかけがえのないものです。
医療的なケアは専門職に任せ、ご家族は「心の寄り添い」と「生活環境の整備」を通じて、ご本人に安心と温もりを届けることが大切です。
在宅での終末期ケアに不安を感じたら、千葉内科在宅・美容皮膚科クリニックまでいつでもご相談ください。
ご本人とご家族が安心して過ごせるよう、医療チーム全体でサポートいたします。
【参考文献】
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年改訂)
日本医師会「人生の最終段階における医療・ケアに関するガイドライン」(2020年)
全日本病院協会「終末期医療に関するガイドライン」(2016年)
全国在宅医療マネジメント協会「終末期患者・家族へのケア」
日本終末期ケア協会「看取り期の家族への声かけ」

千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック 院長 辺土名 盛之(へんとな もりゆき)
経歴
- 三重大学医学部医学科 卒業
- 四日市羽津医療センター
- 西春内科・在宅クリニック
- 千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック院長